ムッシュが愛したモロッコ ウリカ渓谷で育つ植物の神秘

 さて、ここからはピュアショットの効果とスピードを支える“強いボタニカル”の話を。その本拠地となるのがモロッコ、アトラス山脈の麓に広がるウリカ コミュニティ ガーデンだ。

 モロッコは、ムッシュ イヴ・サンローランが66年に初めて訪れ、その色彩に衝撃を受けて「色」を発見した地。ここに辿り着いたのは運命的な感じもするが、植物にとっては過酷な地。寒暖差が激しく、夏は砂漠のような暑さ、冬は冷たく乾いた風が吹きつける中でたくましく育つ植物は並はずれた防御力と抵抗力を持ち、強力な滋養のパワーが備わっているという。

「ウリカの土はミネラル分が豊富に含まれ、10㎞違うだけでその構成成分も量も違うといいます。科学的な肥料や殺虫剤は使わない。ほかの植物を一緒に植えて土がやせないように。斜面を利用した灌漑システムを導入するなど、自生環境を活かしながら伝統的な農法で育てています」

 広大な敷地内は栽培エリアをメインに、新たな原料となる植物の試験を行うボタニカルエリア、ムッシュが愛した花々が植えられたヘリテージエリアに分かれ、200種以上の植物が栽培されている。

「栽培を担当する現地の女性たちの共同組合を設立するなど、ウリカの女性の自立と経済的な支援を目的とした活動を行っています」

 収穫した植物の抽出も現地で。

「植物の有用成分を純度高く、高濃度で抽出するため、独自のコールド&スロー抽出プロセスを採用。植物を天日で乾燥させ、自然に近い形でゆっくり抽出するので時間がかかるのですが、植物のパワーを最高の状態で取り出すためには手間と時間をかけて」

 ここまできちんと体制ができていたとは。“強いボタニカル”が生まれる理由がわかった気がする。

「現在は、栽培のメインガーデンのオーガニック認証プロセスに着手。2023年までにすべての製品に、ガーデンから調達した成分を1種類以上配合することを目指しています」

 今後のピュアショットは?

「新製品を加えながら日常ケアをさらに高機能に。ムーンライトカクタスをはじめ、植物研究も進めていきます」

 ウリカ コミュニティ ガーデンの植物の栽培は現地の32人の女性たちがすべて手作業で行っている。

ウリカとの出会いはサフランから

 “強いボタニカル”の第1号は、プレミアムラインのオールージュ(2014年誕生)に配合されたサフラン。炎症老化と闘うキー成分だ。

 サフランオイルやサフランウォーターなど新成分も開発され、最新形が深紅のルージュサフランコンプレックスを配合した導入オイル。ピュアショット ナイトセラムとW使いすると驚きのシンデレラ効果!!

YSL スキンケア&フェイス マーケティング マネージャー
坂本絵美さん

2004年、日本ロレアル入社。YSLをはじめとするブランドでスキンケア・フェイスメイクアップのマーケティングを担当した後、YSLに戻り現職。「ピュアショット」シリーズの開発から手掛ける。

吉田昌佐美(よしだ まさみ)

1979年より第一線で活躍する美容ジャーナリスト。新旧の名品やブランドの歴史を熟知。情熱的な鋭い取材と確かな分析力に基づく最新技術の分かりやすい解説は、国内外のブランドの開発者からの信頼も厚い。インスタグラム「masami_cosme」

Column

吉田昌佐美のブランド魂発見!

鋭い視点からの取材力と情報の蓄積に定評を持つキャリア35年の重鎮美容ジャーナリストが、コスメブランドそれぞれの「強み」を解説。さまざまな逸品ビューティアイテムに込められた「魂」に迫ります。

2021.01.03(日)
Text=Masami Yoshida
Photo=Kenichi Yoshida

CREA 2021年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

贈りものバイブル

CREA 2021年1月号

特別な一年に想いを伝える
贈りものバイブル

特別定価900円

思いもかけない日々となった2020年。いつもと違う毎日のなかで新しい習慣ともなんとか付き合ったり、戸惑うこともあったと思います。思い通りに会えない日々が続いても、贈りものという形で気持ちを届けたい――。誰もが頑張った一年と、新しい明日に贈る、感謝とご褒美、ときどきエール。いろいろな想いをギフトにして届けます。