#2 出演作の数字で見てもジワジワ来てる大泉洋

 大泉洋の原点の数字はもちろん北海道のローカル番組『水曜どうでしょう』(HTB)。1996年に放送された、記念すべき第1回目の企画「サイコロ1」の視聴率は4.4%だった。

 今更振り返る必要もないが、北海道内でジワジワっと人気を集めたこの番組は1999年に、ローカル番組としては異例の18.6%の最高視聴率を記録している。

 その後『水曜どうでしょう』のレギュラー放送終了を機に大泉は2005年に東京へ本格進出。「救命病棟24時」で全国ネットのドラマに初出演を果たすこととなる。

 これまでに、大泉洋が出演した映画は42本(これから公開予定も含む)、主演俳優として出演した映画は15本だ。ドラマの出演は51本(編集部調べ)。2020年末には『新解釈・三國志』(福田雄一監督)、2021年明けには『騙し絵の牙』(吉田大八監督)と2本の映画の公開も控えている。本数だけ見てもかなりの売れっ子だ。

 出演作はさまざまで、コミカルな役どころから『半分の月がのぼる空』(2010年)の夏目役のようなシリアスな役、『鋼の錬金術師』(2017年)のタッカー役のようなサイコパス感のあるヒール役も演じるなど、幅広い役どころを演じている。「役者である以上、いろんな役をやりたいという思いがある」(ピクトアップ2010年4月号)とは本人の言だが、挑戦と成長を続けながら、幅を広げてきているのだ。

 特筆すべきジワっとポイントは3か所。

 1つは『探偵はBARにいる』だ。『ハケンの品格』(2007年)など人気ドラマでの出演で着実に評価を高め、2010年にはNHK大河ドラマ『龍馬伝』にも出演、満を持しての主演となった本作は興行収入12・2億円のヒットを記録。北海道の大泉洋がジワっと全国区の大泉洋になった年だと言えよう。10億円越えのヒット作品の舞台が自身の本拠地ススキノであるというのも大泉らしい。

 2つ目は2016年の『アイアムアヒーロー』。2015年の『駆込み女と駆出し男』では日本アカデミー賞とブルーリボン賞の主演男優賞を受賞。2016年は大河ドラマ『真田丸』で主人公の兄・真田信之を演じるなど、ノリにノッたこのタイミングでのこの作品は16.2億円の興行収入を達成。ジワジワっと幅広い世代に支持を獲得してきたと言えるだろう。

 そして記憶に新しい昨年の快進撃だ。

 『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』に始まり、なんといっても7月のTBS日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』。平均視聴率こそ11%ではあったが、大泉洋本人のようにジワジワジワっと評判を集め、最終回に最高視聴率13.8%を記録するなど、見事有終の美を飾り「ご存知、大泉洋」と相成ったのである。

 そしてこの2020年の紅白白組の司会へとつながっているのだ。

 大泉自身は紅白司会への意欲を聞かれ「しゃべりすぎて、年を越してしまうという失態だけを気をつけて命がけで頑張ります!」と、ブルーリボン賞の時を踏まえた冗談を交えながらも意欲満々。

 これまでの作品と同じように大泉劇場で最近低迷の紅白歌合戦もジワ―っと盛り上げてくれるはず。

 2020年の紅白歌合戦は、どうでしょう。

2020.11.24(火)
文=CREA編集部
撮影=釜谷洋史