郷土料理こそがイタリア料理の真髄!

 イタリア各地方の郷土料理や、マンマが工夫して作った料理を研究している齊藤奈津子さんが、家でもできる簡単なイタリア料理をご紹介します。


栗をこよなく愛するイタリアの収穫祭とは?

 秋の旬な食材と言えば“栗”。

 イタリアでも日本と同様に、秋を代表する食材といえば栗なんです!

 実はイタリアの栗の生産量は日本より多く、世界でも5本の指に入ると言われています。

 中でもトスカーナ州はイタリアでも有数の栗の産地で、そのクオリティもかなり高いことで知られています。

 この時期になると、イタリアの各スーパーマーケットや市場では一斉に生栗が並び、街の至る所で屋台の焼き栗屋さんが栗を売っています。

 レストランのメニューにも栗の詰め物のパスタやリゾットなど、栗を使ったメニューが並びますが、実はイタリアで最も多く食べられているのは焼き栗で、家庭でも専用の穴の開いたフライパンを使って焼き栗を作ります。

 年に数回しか使われないけれど、どの家庭にもあるこのフライパン、切り込みを入れた栗を入れ、直接コンロか暖炉などで焼くだけ。

 誰が焼いてもほくほくに美味しく焼きあがります! 「Vino Novello(ヴィーノ・ノヴェッロ)」というその年の新ワインと合わせて食べるのがイタリア流。焼き栗と新ワインで秋の味覚を楽しみます。

 そして、この時期に多くのイタリア人が楽しみにしているのが、Sagra(サグラ)と呼ばれる収穫祭。

 地元の特産物を祝う祭りなので、公園や学校が会場となることが多く、住民や学生たちがボランティアで一生懸命手伝っている光景を目にします。

 サグラはその地域の旬な食材や郷土料理を楽しむイベントなので、栗はもちろんのこと、ポルチーニやトリュフ、ジビエやパスタなど、各地で様々な種類のサグラが行われます。

 栗で特に有名なのは、フィレンツェから電車で1時間半くらいのところにある「Marradi(マッラーディ)」という小さな街で行われる、栗のサグラ。

 街全体を使う大規模なサグラで、駅に着いた瞬間から香ばしい焼き栗の良い匂いが漂ってきます。

 大きな専用のフライパンで焼いた焼き栗をはじめ、パスタや栗のドルチェ、栗のリキュール、栗のビールにハチミツなど、あらゆる栗の商品が並びます。

 小さな演劇やミニコンサートなども開催されるので、1日中いても飽きないのも魅力。

 街のお祭りなのでレストランで食べるよりも値段も安く、旬の食材を贅沢に食べられるサグラ!

 私もこのサグラが大好きで、滞在中は毎週のように色んなサグラに行きます。

 ワイン片手に街をぷらぷら、最高です。

 マッラーディの栗のサグラは、毎年10月の各日曜日に開催されます(確認を!)。インターネットで検索できるので、旅行でイタリアに行く時、サグラをチェックしてみるのもおすすめですよ!

 ということで、今回はイタリアでも最も多く食べられる「焼き栗」をご紹介。あのフライパンがなくても、おうちのオーブンで簡単にできますよ!

2020.11.13(金)
文&写真=齊藤奈津子
撮影=佐藤 亘