襲名のプレッシャーに寄り添ってくれた欅坂46の歌詞
──もうひとつ、欅坂46のファンでいらっしゃることも有名ですが、それもやはり、惹かれる理由は唯一無二だからですか。
それもありますけど、一番は、生きることを考えさせられるような哲学的な歌詞だったということが大きいですね。
初めて欅の曲を聴いたのがちょうど八代目市川染五郎を襲名する時期で、襲名披露公演でとても大きな役をやらせていただくことになっていたので、そのプレッシャーとできない自分に対しての悔しさがあったんです。
欅の歌詞は当時のそういう自分の気持ちに寄り添ってくれるようで、そこに惹かれたんです。
──10月のラストライブで欅坂46は活動を休止しますが、それについてはどんなふうに受け止めていますか。
でも、改名してまた新たなスタートを切るそうなので、今までと変わらず応援したいと思っています。それこそ歌舞伎には襲名というものがあって、自分も金太郎から染五郎に名前が変わりましたし。
自分自身のことはこれからどうなるかわかりませんが、名前が変わったからといって急に何もかも変わるわけではなく、今まで通りでいながら、自然にだんだんとゆっくり時間をかけて、いろいろ変わっていったら面白いのではないかなと思ったりしています。
──とても冷静にいろんなことを見つめておられるなと感じますが、このコロナ禍で歌舞伎の幕が開けられない時期は、どんなお気持ちでいらっしゃいましたか。
あのときはさすがに、いつ歌舞伎ができるようになるんだろうと不安な毎日を過ごしていました。だから、Zoomを使った『図夢歌舞伎 忠臣蔵』を父が立ち上げて、そこで大星力弥を演じたときは、久しぶりに歌舞伎ができたことがうれしくて。
初舞台から当たり前にやっていたことができない状況になっていましたから、自分で白塗りをして、いつもの衣裳さんに衣裳を着せてもらって、いつもの床山さんにかつらをかけてもらうということに、大きな喜びを感じながらやっていました。
──自粛期間中は、何をやっておられたのでしょう。
ベースでマイケル・ジャクソンの曲を弾いたりしていましたね。もともと重低音が効いた曲が好きで、マイケルの曲もベースが印象的な曲が多いので、それもマイケルが好きになった理由のひとつだと思うんです。
マイケルの曲を弾きたいと思って去年からベースを始めたのにしばらくできていなかったので、自粛期間中にまた始められてよかったです。まだまだ上手くは弾けないですけど。歌舞伎は歌に近い台詞まわしもあり、リズム感は必要だと思うので、楽器をやることは歌舞伎にも活きるでしょうし、続けていきたいです。
2020.10.04(日)
文=大内弓子
撮影=佐藤 亘
スタイリング=中西ナオ
ヘアメイク=AKANE