今さら言うまでもない韓国ドラマ「愛の不時着」の人気ぶり。世界配信の「Netflix」に乗って、日本のみならず、タイやフィリピンなど世界各国でも大流行中だそう。
「愛の不時着」は、パラグライダーに乗った韓国の財閥令嬢で起業家でもあるセリ(ソン・イェジン)が竜巻に巻き込まれ、たどり着いた先の北朝鮮で、彼の地の将校ジョンヒョク(ヒョンビン)と恋に落ちるロマンティックラブストーリー。
こう書くと、 “お決まりの”と思ってしまうが、幹となる南北国境38度線を超えたふたりの切ないラブストーリーに、脇役が固める枝葉の細部までが丁寧に描かれていて、韓国ではケーブルテレビ「tvN」史上最高の視聴率(21.7%、視聴率調査会社「ニールセンコリア」ケーブル基準)を記録した。
主役2人とともに 人気だった “耳野郎”
韓国で主役2人のスターとともに人気だったのが、北朝鮮兵士4人組と、 “耳野郎”と呼ばれる監諜(傍受)室所属の盗聴担当だ。
“耳野郎”は北朝鮮で使われる盗聴者の隠語で、仕掛けた盗聴器から人々の会話を記録して保衛部(警察)に報告する人物。主人公ヒョンビン演じる将校とは深い因縁で結ばれた大事な役どころだった。
その “耳野郎”を演じたのは、これまで舞台を中心に活動していた芸歴22年のベテラン俳優、キム・ヨンミンさん(48歳)だ。「愛の不時着」に続いて出演した「夫婦の世界」(JTBC、日本では7月からKNTVで放映)も大ヒットとなり、韓国で今、時の人となっている。
キム・ヨンミンさんに “耳野郎”の役作りや役柄への思い、撮影中のエピソードなどについて聞いた。
「予想をはるかに超えるものになっていて驚いています」
――日本で「愛の不時着」の人気が止まりません。出演された当時、これほどヒットすることは予想していましたか?
「韓国でロマンティックコメディの大家といわれるパク・ジウン作家(『星から来たあなた』や『青い海の伝説』などの作品がある)の作品ですし、ヒョンビンさん、ソン・イェジンさんというふたりのスターが出演するので多くの人に愛されるだろうと思ってはいたのですが……。
その予想をはるかに超えるものになっていて驚いています。先日はインドネシアからファンレターを頂きました」
―― “耳野郎”という人物を演じることになった時、どういう人物をイメージされたのでしょう?
「盗聴者というと、みなさんやはり拒否感がありますよね。耳野郎を演じるにあたって真っ先に思い浮かんだのが、ドイツ映画『善き人のためのソナタ』でした。
これはベルリンの壁崩壊前の監視社会だった東ベルリンが舞台になっていて、主人公は国が危険人物とみなした人物を盗聴する役でした。
ところが、盗聴するうちにその対象者である夫婦に共鳴してしまうんですね。盗聴する側は盗聴しながら葛藤する。私が演じた耳野郎もそんな存在ではないかと思いました」
2020.07.11(土)
文=菅野朋子
写真=Junwoo Cho