窓の外に広がる渓谷の眺め、雪に囲まれた神秘的な湯、ゆるやかに流れる島時間……。
日常とはまるで違う別世界に身をおけば、心に新鮮な風が吹き抜けます。
陽の光、鳥の声、そのすべてがやさしくて
●島宿真里[香川・小豆島温泉]
冬の低い陽射しを受けて、凪いだ瀬戸内の内海がきらきらと輝く。
高松港から高速艇で約35分。周囲が雨でも、不思議と晴れる日が多いという小豆島は、いつもまばゆい光に溢れている。

全国的にも有数の日照時間の長さと温暖な気候を活かし、オリーブや柑橘類の栽培が盛んで、古くから醤油の生産でも栄えてきた。
木造の醤油蔵と民家の並ぶ、なだらかな上り坂の途中に島宿真里はある。
暖簾をくぐると館内のあちこちに光が躍っていた。

昭和初期に建てられた自宅で、50年ほど前に現オーナーのお母さんがはじめたという小さな民宿。
建物は国の有形文化財に登録され、現在でも食事処の一部として大切に使われている。
この辺りは、「醤の郷」と呼ばれ、400年前から「木桶仕込み」で時間をかけて小豆島醤油を作り続けてきた。
宿ではその特産品を主役に、地元食材を使った醤油会席が供される。

母屋に合わせて増築された館内には、囲炉裏やガラス戸など、建物と同様に時を経た家具や調度品が静かに佇んでいる。
先ほどまで、長椅子に射していた光が、ほんのわずかのうちに梁の木目を照らす。
フロントでは古い壁掛け時計が心地よく時を刻んでいる。
ひとり、島を流れる時間に耳を傾けると、普段より穏やかな気持ちになった。

全室に部屋風呂があり、やわらかな肌触りの湯にも癒される。


ここには確かにもうひとつの日常があり、流れる時間は島の陽光のようにやさしく、心をほどいてくれる。

島宿真里
所在地 香川県小豆郡小豆島町苗羽甲2011
電話番号 0879-82-0086
宿泊料金
◆1室1名利用時の1名最低料金 平日 35,100円~
◆1室2名利用時の1名最低料金 平日 27,000円~、休前日 29,000円~
ひとり料金 1泊2食付き 35,100円~
ひとり対応 平日のみ
客室数 8室
食事 朝:食事処/夕:食事処
チェックイン 13:00/チェックアウト 10:00
交通 高松港よりフェリーで草壁港下船後、車で約10分
https://www.mari.co.jp/
※Wi-Fiあり
※宿泊料金は、とくに表記のない場合は、税金・サービス料別の最低料金を記載しています。入湯税は含まれている場合もあります。詳しくは施設にお問い合わせください。
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日常を忘れられる
リセット宿3選
2020.02.13(木)
Photographs=Mitsugu Uehara
CREA 2020年2・3月合併号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。