窓の外に広がる渓谷の眺め、雪に囲まれた神秘的な湯、ゆるやかに流れる島時間……。
日常とはまるで違う別世界に身をおけば、心に新鮮な風が吹き抜けます。
過ごすほどに、だんだん自然が近づいてくる
●渓谷に佇む隠れ宿 峡泉(きょうせん)[長野・天龍峡温泉]

朝、湯に浸かりながら渓谷を見下ろせば、昨日はミントブルーだった川面が、エメラルドに染め変わっている。
風の向きも、光の色も、葉の揺れも違う。
滞在していると、確実に“自然を感じやすい体”になっているのは、そのじつ偶然ではない。

「私たちの圧倒的な強みは、天龍峡の中にあるこの立地です。ふと自然に目を向けた時、邪魔になるものはできるだけ取っ払う。
空間は主張せずシックな色合いに徹していますし、ラウンジの音楽も川の流れる音を邪魔しない、包み込まれるような音になるよう、音響デザイナーと考え抜いています」と話してくれたのは、主人の小林義道さん。


もともとは、30年続く旅館だったこちら。宿泊施設のコンサルティング会社がその名を受け継ぎ、リニューアル。
現代のニーズを熟知した彼らゆえの、さまざまな演出が光る。



「おひとりのお客様には、8室だからこその静けさ、できるだけ自分の時間を守れるように心がけています」


ラウンジにはセルフのドリンクカウンターを設置。
風呂は部屋付きだけでなく、大きな窓のある貸切風呂も予約せずにひとり利用できる配慮がありがたい。

ただ感じるのは、見せ方こそモダンに刷新されているものの、旅館としての風情やおもてなしの心はしっかり保たれていること。
「旅館は日本の素晴らしい産業であり、文化だと思っています。その魅力は、やっぱり“人”。合理性を考えてきましたが、運営してみて改めて、人の大切さに気づきました」
万感の思いが溢れる表情で、小林さんは静かにつぶやいた。

渓谷に佇む隠れ宿 峡泉(きょうせん)
所在地 長野県飯田市川路4942-2
電話番号 0265-27-3332
宿泊料金
◆1室1名利用時の1名最低料金 平日 32,545円~、休前日 33,454円~
◆1室2名利用時の1名最低料金 平日 23,272円~、休前日 25,863円~
ひとり料金 1泊2食付き 32,545円~
ひとり対応 通年可
客室数 8室
食事 朝:部屋・食事処/夕:部屋・食事処
チェックイン 15:00/チェックアウト 11:00
交通 JR天竜峡駅より徒歩5分(送迎あり、要予約)
https://kyousen.com/
※Wi-Fiあり
※宿泊料金は、とくに表記のない場合は、税金・サービス料別の最低料金を記載しています。入湯税は含まれている場合もあります。詳しくは施設にお問い合わせください。

日常を忘れられる
リセット宿3選
2020.02.09(日)
Text=Mitsuharu Yamamura
Photographs=Yukihiro Shinohara
CREA 2020年2・3月合併号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。