クリスマス前から旧正月(2013年は2月10日)にかけての今、香港は一年で最も賑やかなシーズンを迎えている。きらびやかなイルミネーションと、冬の大バーゲン(高級ブランドも巻き込んだクレイジー・セール!)が重なり、街はどこも、まるでお祭りのよう。そんな華やかな街の中にも、変わりゆく風景、変わらない風景が入り混じる。
九龍半島サイドの尖沙咀。彌敦道(ネイザンロード)は、頭上に突き出す派手な看板がいかにも香港らしい、メインストリート。人通りの多さと賑やかさこそ昔と変わらないが、通りの雰囲気は、この数年で確実に変化している。2009年以降、ガラス張り31階建ての「i SQUARE」、29階建てで16階に空中庭園を持つ「The ONE」、アートをモチーフにした「K11」など大型ショッピングモールが次々と生まれ、派手な看板も消えてしまった。熱気ムンムン、そしてどこか雑踏の臭いが魅力だったアジアの街は今、その姿を少しずつ変えつつある。
香港島サイド、中環(セントラル)の路地裏は、新旧の街並みがコントラストを描くエリアだ。高層ビルが林立し、ビジネスマンがせわしなく歩き回るオフィス街の周辺を30分も散策すれば、レトロな風景に出会う。英国統治時代のクラシカルな建物を見つける荷李活道(ハリウッドロード)、古い建物をリノベーションした個性派ショップやギャラリーが並ぶSOHOは、のぼり坂も苦にならない、楽しい散歩コースだ。おしゃれな各国料理やカフェの合間に日本の昭和を思わせるような駄菓子屋を見つけることもあって、飽きることがない。
中環の一角、皇后大道中(クイーンズロード)から山側に向かって伸びる細い坂道の通り、嘉咸街(グラハムストリート)一帯は、野菜や肉など生鮮食品店や雑貨店、食堂などが集まる、100年以上の歴史を持つ一大露店街だった。90年代の香港映画『恋する惑星』で、主人公のフェイ・ウォンが野菜の籠を引きずって何度も通り過ぎる場所、と言えばピンとくる人もいるかもしれない。近未来的なビルの谷間に露店が広がる独特な光景が見られたこの場所にも、再開発の手が。店は徐々に撤退し、昔日の姿は失われている。
2012.12.18(火)