2枚のジャケットを
見比べてみたら……
俺は、これに似たアルバムを持っている。えーと何だっけ、……あれだ!
ブラジル人シンガーソングライター、マルコス・ヴァーリのアルバム『Marcos Valle』である。
並べてみよう。
似ている。
そのシチュエーション設定は言わずもがな、原色とパステルカラーを効果的に配したデザインの美学が通底している。
俺は地面に向かって叫びたい。ブラジルの人、聞こえますかー!
1964年のデビューから、サンバ、ボサノヴァ、ロック、ソウル、ファンク、フュージョン、AORなど、さまざまなジャンルを横断するグルーヴィーな音楽を届けてきたマルコス・ヴァーリ。
それに対し、五木ひろしのデビューはマルコスに1年遅れる1965年(ちなみに、『旅路のはてに~』のジャケット内のテレビ画面に映っているのは、64年に行われたコロムビア全国歌謡コンクールにおいて優勝した際の五木の姿とおぼしい)。ほぼ同期なのだ。
そして、ご存じの方にとっては先刻承知だろうが、五木ひろしの音楽的興味の範囲は幅広い。これまで、レコーディングやライブで披露してきたカバー曲は数知れない。
その中には、SMAP「世界に一つだけの花」、DREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」、安室奈美恵 with SUPER MONKEY’S「TRY ME ~私を信じて~」というヒット曲、そしてなぜかピクミンの「愛のうた」などという変わり種まで含まれる。
2015年にNHKで放送された「五木先生の『歌う! SHOW学校』」なる冠番組にて、三代目J Soul Brothersの「R.Y.U.S.E.I.」をランニングマンの振付まで含めて華麗に歌い踊ったことは記憶に新しいだろう。
そもそも、演歌の世界にR&Bのフィーリングを持ち込んだという意味で、この人の功績は計り知れない。演歌歌手という先入観を取っ払って、「待っている女」「よこはま・たそがれ」を改めて聴いてほしい。紛れもない和製R&Bの逸品がそこにある。
事細かな理路は断腸の思いで省略するが、そんな五木ひろしがブラジルのグルーヴマスター、マルコス・ヴァーリの存在を意識していたとて微塵も不思議なぞないのだ。
ということで、北半球と南半球、地球の表裏で共鳴する五木ひろしとマルコス・ヴァーリのシンクロときめきっぷりを、アートワークの面からさらに検証していくこととしよう。
2019.06.17(月)
文・撮影=ヤング
写真=文藝春秋