出港は早朝3時!
いよいよガチの漁船に乗船

 猛烈な眠さと戦いながら到着したのは、鹿渡島漁港。

 真っ暗のなかに煌々と明かりをともした漁船が停泊しています。

 今回、漁船に乗せてくれるのは(株)鹿渡島定置。1992年からここを拠点にして定置網漁を行っています。

 ユニークなのが、本物の漁船に乗って大型定置網漁の様子を目の前で見学させてくれるところ。全国的にも非常に珍しい試みです。

 定置網を仕掛けた漁場へ向かう途中、8人の漁師さんたちを率いている社長の酒井秀信さんが参加者の質問に答えてくれます。

「日曜と祝日、あとときどき水曜を休むほかは、ほぼ毎日漁に出るね。大漁で儲かった年には、ボーナスとしてみんなでハワイ旅行にいったりするよ」

 そんな話を聞きながら、ふと外を見ると漁船のまわりにはカモメがいっぱい。

 漆黒の闇の中に輝く漁船のライト、その上に満天の星がきらめき、白いカモメが無数に舞っています。

 こんな幻想的な光景、生まれて初めてです。

 やがて大型定置網を仕掛けた漁場に到着。

 酒井社長が陣頭にたって網を引き上げていきます。

 邪魔にならないよう注意すれば、すぐ近くに寄って見学もOK。

 定置網の大きさは、約40×200メートル。

 海中に定置した網の中に回遊する魚が入ってきて、それを引き上げるのが定置網漁です。

 魚を追いかける巻き網漁などとは違い、魚を獲りすぎてしまうことが少ない、サステナビリティ(持続可能性)の高い漁法といわれているそうです。

 いよいよ漁のクライマックス。ザーッと海水をしたたらせて網が引き上げられます。

 乗船した3月は、カタクチイワシの季節。あまりの大量さに圧倒され、ただただ茫然……。

「季節によって獲れる魚は変わるけれど、何十年と漁師をやっていても今日獲れる魚、明日獲れる魚は、網を上げてみないと分からないんだよね」

 しかも、今日たくさん獲れても、次の日はさっぱり、ということも。

 こればかりはどんなベテランの漁師さんでも、実際に引き上げてみないとわからないのだそう。

2019.06.07(金)
文・撮影=矢野詔次郎