料理を「作らない・作れない」ことに罪悪感を持っている人に贈る、ベテランフードライター・白央篤司さんの金言&レシピ。冷凍食品にちょい足しするのも立派な自炊。簡単なことから始めてみませんか?


「作らない・作れない」ことに
罪悪感を抱く必要はないんです

 こないだ作った、カブのスープ。

 チキンスープでカブを煮て、酒とみりん、塩ちょい、香りづけに醤油少々。刻んだカブの葉を入れて、最後におろしショウガをたっぷりと。水溶きカタクリ粉で軽くとろみをつけて完成です。

 寒い朝にいいんですよ。

 と、いきなり料理の話からはじめましたが、私は白央篤司(はくおうあつし)と申します。この10年ちょっと、ほぼ食べものの記事や本だけを書いてきました。昨年の11月に『自炊力』(光文社新書)という本を出したばかりです。

 世の中、料理好きのための本は数多くあるけれど、料理が苦手だったり、現在は忙しくて料理をする気力・余裕はなかったりする人のための本がほとんどない……。『自炊力』を書いた理由のひとつには、こんな思いがありました。

 世の中「料理が嫌い」という人だって、たくさんいるわけです。嫌いまでゆかずとも、「食べることは好きだけど、作るのは苦手」「面倒」「どうにも気が向かない」「今はやりたいと思えない」という声は少なくない。そして同時に「そんな自分に罪悪感を覚える」という人も多いのです。

 人間食べることからは逃れられません。イヤでも何かしら毎日食べなければならない。そのとき「作らない・作れない」ことに小さいながらでも罪悪感が生まれているのだとしたら、こんなつらいことはないと思うんですね。

 そんな人たちへのエールと、そしてごくごく簡単な「こうやったらちょっとは栄養バランスもよりよくなるし、楽に自炊感がアップすると思うよ」的なアドバイスを書き留めたのが『自炊力』という本なんです。

 『自炊力』で私はまず「買うことだって自炊である」と定義しました。料理することだけが自炊じゃない、と。

 現在、中食(できあいのお弁当やお総菜を買ってきて食べること)が食生活の中心という人はすごく多いわけです。ならば「どう買うか」という力こそが、現代では大事だと思うんですね。

 「今回の一食、栄養的には〇〇が足りてないな」「昼と夜で、ちょっと〇〇が多すぎだな」と考えられる力が、まず自炊力アップの第1歩だと。

 それがだんだん自然にできるようになったら、「じゃあ、足りないものをどう足すか?」「どう“楽”に足すか?」「どのくらいの量を足せばいいのか?」と、ステップごとに考えられるようになっていけばいいと思うのです。

2019.03.17(日)
文=白央篤司