「10円コンサート」を手伝う
「anan」に行っても、仕事なんてないんですよ。上司にくっついて、取材と称して毎日単に遊びに行ってただけ。
「今日はどこそこのディスコがオープニングだから行こう」とか「今日はどこそこでパーティがあるから行こう」とか、それをずっと繰り返してるだけ。
ただ、そういう情報が記事として世に出ると、当時は、ネットなんかのある今と違ってそれなりの価値があったんですね。「この雑誌は時代の先頭を行ってるんだな」と読者が思うだけの有難みがあった。
「anan」の名刺があればどこへ行ってもタダで入れちゃうというすごい時代だったんですよ。その味を覚えちゃったから、音楽やるのもめんどくさくなっちゃって、9カ月ほどただ遊んでおりました。
そんなある日、上役と一緒に取材に行った先で、立川直樹という男に会うんです。こいつがまあ、悪名高い、ろくでもないインチキな男なんですけど(笑)。
その立川が、「今度、日劇でウエスタンカーニバルならぬ、ロックカーニバルというのがあるんだけど、それに僕は出るんだよ」と急に言い出すわけです。何でも、カルメン・マキと一緒に出演するらしい。
何かのきっかけで、僕がキーボードを弾けるということに、彼は感づいたらしく、「じゃあ、僕のバンドでキーボードやらない? カルメン・マキと一緒にやってるんだけど」と誘ってきた。
その一言で、もともと持っていた音楽に対する情熱が目覚めまして、エディター見習いが嫌になっちゃった。「anan」に行くのをやめて、ずっとバンドの練習。
「カルメン・マキ&タイムマシーン」という名前でロックカーニバルに出演したんですが、カルメン・マキさんと自分の音楽性が合わないことに気づいて、このバンドはその時限りで終わりました。
同じ時期に、アメリカに行っていた成毛滋さんが帰国するんです。そして、向こうで流行っていたフリーコンサートというものに衝撃を受けて、同じことを日本でやろうと思い立った。
日比谷の野音でやろうと考えたものの、タダでやるのはルールとして難しいらしく、10円だけ取ろうということで、「10円コンサート」と銘打つことにした。
そのビラを配ったりとか、ラジオ局にあいさつにいったりとか、いろいろ手伝ってるうちに、私は、内田裕也さんに出会うわけです。
近田春夫『超冗談だから』
ソロ名義としては38年ぶりとなるニューアルバム。作詞・作曲・編曲には、秋元康、のん、AxSxE、児玉雨子らに加え、筒美京平マニアの市井の作家などが参加。男性アイドルポップス、ラテン歌謡、ディスコ歌謡、シティポップなど、バラエティに富んだ10曲を収録。
ビクター 発売中 2,778円(税抜)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A026255/VICL-65050.html
LUNASUN『Organ Heaven』
近田春夫がDJにしてトラックメーカーであるOMBとともに活動する2人組ユニット、LUNASUNによるアルバム。近田のグルーヴィーな手弾きのハモンドオルガンが炸裂している。ジャケットを飾るのは、画家としても活躍する近田春夫書き下ろしのイラスト。
ビクター 発売中 2,037円(税抜)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A026255/VICL-65087.html
【取材協力】
本の場所
近田春夫が語る近田春夫
2018.12.19(水)
構成=下井草 秀(文化デリック)
撮影=釜谷洋史
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