「空白の一千年」ののち、土偶はまた出土する

 それから約3年。「縄文の造形をもっと見たい」「知りたい」という思いに応える展覧会がついに始まった。滋賀県のMIHO MUSEUMで開催されている、「土偶・コスモス」展だ。

 縄文時代の始まりの頃(約13000年前)、明確な顔や手足を持たない何者かとして出現した土偶は長い時間をかけて少しずつ形のバリエーションを増やし、中期(約5500~4500年前)にいたってついに顔を持つようになる。よく言われる豊満な胸や腰を強調した「女性的な表現」も、実はこの頃からで、45cmを超える大きさとへらで緻密に磨き上げた、土偶の中でも特異な完成度を誇る国宝3土偶のひとつ、長野県棚畑遺跡出土の「縄文のビーナス」は中期に、青森の「合掌土偶」と北海道の「中空土偶」は後期(約4500~3300年前)に制作されたものだ。

左:「相谷土偶」滋賀県教育委員会 撮影 藤森武
右:国宝「縄文のビーナス」茅野市蔵

 土偶がなんのために作られたのかは、わからない。その多くがバラバラに破壊された形で出土し、あるムラ跡からは多数の土偶が発見されるのに、別のムラ跡からはまったく見つからないこともある。かと思えば、日本中のあらゆる遺跡から一切土偶が発見されない「空白の一千年」があったりもする。人間の生に換算すれば約40世代の後、土偶はまた何食わぬ顔をして出土するようになるのだが、なぜ一度土偶作りが停止されたのか、そしてどうして千年を経たのち、ロストテクノロジーとはならず、同じようなデザインで制作を再開することができたのか、いずれにしてもわからないことばかりだ。

左:国宝「合掌土偶」是川縄文館 撮影 藤森武
右:国宝「大型中空土偶」函館市縄文文化交流センター

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2012.09.15(土)