スレートの産地スノードニアに
アーサー王の走った丘を見た

むき出しの山肌。荒々しいとも言えるスノードニアの風景。

 ローマ時代からスレートの産地だった北ウェールズのスノードニア。スノードニア国立公園の中心ともいえるスノードン山は標高約1000メートルだが、深い谷に風や氷雪が吹きつける。

ヒラリー卿ほか多くのアルピニストが訪れた「ペン・ア・グワァレッド・ホテル」。

 エベレストに人類初の登頂を果たしたエドモンド・ヒラリー卿はじめ、並みいるアルピニストがトレーニングでも訪れた山。壮大な風景が広がり、キング・アーサーが活躍した場所にふさわしい雰囲気だ。

標高は1000メートルほどでも、自然の厳しさを感じさせるスノードニアの山。

 まずは、元スレート鉱山で、今や地底トランポリンなどのアクティビティが楽しめるレレウェード・スレート洞窟を訪ねる。

今でも屋根材に使われるスレート(粘板岩)。コースターやお洒落な皿にも使われる。

 19世紀半ばにはここで1日に600人が働いていたというが、現在は洞窟ツアー、トランポリン、ロープを滑り降りるジップラインなど、アクティビティの場になっている。

地底トランポリン、ジップライン、見学ツアーなどが行われる洞窟への入り口。
地下にネットが張られて、ビッグジャンプできる(1メートルは跳び上がれそうな)トランポリンが! (C)VisitBritain / Visit Wales Image Centre

 さらに洞窟はチーズを熟成するのに最適な場所ということで、野性味のある熟成チェダーチーズも作られている。

良質なスレートは、きれいに割れる。

Llechwedd Slate Caverns
(レレウェード・スレート洞窟)

所在地 A470, Blaenau Ffestiniog LL41 3NB
電話番号 01766-830306
http://www.llechwedd-slate-caverns.co.uk/

蒸気を立てて、乗客を待つ機関車。機関士がまた頼もしい。

 もう一つ、スノードンには山岳鉄道ウェルシュ・ハイランド・レイルウェイが走っている。レトロな蒸気機関車は、とても楽しめる。

車両の椅子は家具のように置かれている。クラシックな雰囲気が素敵。
濃厚な熟成チーズには、甘酸っぱいチャツネがとても合う。

 我々はポースマドックから10マイルの折り返し運転に乗車。まるで走るリビングのように、テーブルと造り付けではない椅子が置かれた車両で、濃厚なチェダーチーズとチャツネ(野菜や果物を煮込んだソース)の味わい深い組み合わせのランチを堪能した。

 車窓からは、静かに草をはむヒツジ、そして堂々たるスノードニアの山々が眺められる。2時間の列車の旅はあっと言う間だった。

車窓の風景。静かなヒツジ達と靄のかかる険しい山が対比をなす。

 野性味あふれる自然に恵まれたスノードニア。後篇では、父の仇ヴォーティガンに処刑されそうになったアーサーが、崖からはるか下の川にダイブして逃げ延びた場面に登場する、断崖絶壁や個性的な古城の数々を訪れる。

【取材協力】
英国政府観光庁 

https://www.visitbritain.com/jp/ja

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

2017.06.18(日)
文・撮影=小野アムスデン道子