遊びはゼロ、人の顔の上だけで
意味を持つ色のグループがあった
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メイクには、いつの時代もこんな提案がある。「ルールは何もない。自由奔放に色を遊びましょう」。でもそう言われていい気になって、自由に色を遊ぶとだいたい失敗する。ひとえに、顔の上だからである。
実は、人間の顔ほど厳密なものはない。例えば、口の位置が2ミリ下にあっても、目と目の距離が2ミリ近づいても、印象が大きく変わるほど人の顔は極めて微妙なパーツと配置の集合体だからこそ、本来は多くのタブーとルールがあり、自由で奔放な色の遊びなどありえない。でも大丈夫。昔は、危険な色がいっぱい出回っていたが、試行錯誤を繰り返して、失敗を呼ぶ色は次第に排除され、今は色を遊べるまでに絞り込まれているから。
そんな中、遊びはゼロ、人の顔の上でだけ重要な役割を果たす色のグループがある。最近、アイライナーやマスカラに改めてブラウンが目立つが、その多くは赤みを含んでいて、ただ馴染むだけじゃなく、黒以上に目を大きく見せてくれたりするはず。
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2017.05.01(月)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫
CREA 2017年5月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。