コーヒーライターのヴォーンさんが愛する
日本のコーヒー時間
居心地の良い空間で、丁寧に淹れられた一杯のコーヒーを、時間をかけてゆっくりと味わう。そんな、日本らしい趣のある喫茶文化に惚れ込んだ、ひとりのコーヒーラヴァーがいる。それが、世界でも有数の「カフェの街」として知られるオーストラリア・メルボルン出身のヴォーンさん。
現在、東京でモデル兼コーヒーライターとして活躍している彼は、多いときには1日に10軒ものカフェを巡りながら、自らの舌で味わい捉えたコーヒーの最新トレンドを、SNSやウェブメディアを通じて発信している。
これまでに1000軒以上のカフェを訪れたという彼の目に、日本のコーヒー文化はどのように映っているのだろうか。ヴォーンさんが「マイホーム!」というほどに親しみを感じている、お気に入りの喫茶店で話を伺った。
自然と足が向く
我が家のようなコーヒースポット
渋谷は宮益坂の裏手にひっそりと佇む「茶亭 羽當」。あの「ブルーボトルコーヒー」の創業者兼CEOのジェームス・フリーマン氏が「日本でもっとも好きなカフェ」としてその名を公言するなど、世界のコーヒー通が注目する老舗喫茶である。
「2日に一度は必ず来ています(笑)。いつも2~3時間いて、パソコンで仕事をしたり、本を読んだり。美味しいコーヒーを飲みながら、とてもリラックスできる場所です」
通い始めて4年、今ではすっかり常連となり、バリスタと気さくに声をかけ合う間柄に。そもそも羽當を知ったきっかけを尋ねると、ユニークな裏話を聞かせてくれた。
「もともとコーヒーが大好きで、10年ほど前に東京で暮らし始めてから、趣味でカフェ巡りを続けていたんです。次第に、美味しいコーヒーが飲めるお店にも詳しくなり、それを紹介するブログを始めました。そんなある日、渋谷の街中で僕が大ファンのアメリカのミュージシャンを偶然に見かけました。何やら困っている様子だったので、思い切って英語で声をかけたところ、彼らは『日本で有名なHATOUというお店を探している』と……。(ハトウって!?)。お恥ずかしいのですが、コーヒーブログまでやっているのに、僕はまだその有名店の名前すら知らなかったんです。東京のカフェ文化の奥深さを感じましたね。地図を見ながら、彼らを案内して連れてきたのが初来店になりました」
2017.04.19(水)
文=中山理佐
撮影=佐藤 亘