ボルドーのワイン造りは進歩を続ける
それぞれのシャトーによって土壌や地理的条件なども異なるので、造るワインが違えば、醸造の方法も結構違うものだ。
ボルドー内に9つのシャトーを持つ「ドゥルト」。そのうちの一つ「シャトー・ペイ・ラ・トゥール」は、同じ面積でもブドウの栽培量を増やす方法として、ブドウ畑の列を増やす一方で、枝分かれの数は減らしたり、列の間に草を植えたりしてブドウの質を保っている。
収穫したブドウが入るタンクの温度は、熟成度によってベストな発酵になるようにコンピューターでコントロール。タンクから樽詰めまで、それぞれのセパージュ(ブドウ品種)ごとに行い、ブレンドするのはボトリングする前だ。
一方「シャトー・トゥルコー」では、タンクに入れる段階でセパージュのブレンドをすでに行っている。
樽に入れる前のタンクの段階で、貴重な味見をさせてもらったら、驚くほど甘みがあった。これがアルコール発酵によって甘みが抜けて、洗練された深みのある味に変わるのは不思議としかいいようがない。
また「イヴォン・モー」は、2万5000平米の“工場”から年間30万本を出荷するという大企業。ここにはワイン畑はなく、バルク(タンク)で買ったワインのアッサンブラージュ(ブレンド)をしてボトル詰めをして出荷する。
ボルドーのブドウの買い付け者(ネゴシアン)、生産者、そしてコンサルタントを兼ねていて、バルクで買うワインの品質検査やトレーサビリティを徹底している。
そして優秀なワインメーカーによるアッサンブラージュで、消費者の嗜好にあったワインを造り上げる。日本を含む80カ国に輸出しており、有名ワインメーカーとボルドーワインの新たな価値創造を担う話題のワインも造る。
右:今年、ジャパン・ウィメンズ・ワイン・アワード(SAKURA Awards)でダブルゴールドを取ったロゼ。フルーティでさっぱりして、前菜に合う。
こうした大企業もあれば、1839年から続く10ヘクタールの畑を引き継いだ7代目が、ビオワイン(有機農法で栽培したブドウを使った自然派ワイン)にこだわって造り始めた「ヴィニョーブル・ボワソノー」のような家族経営のワイナリーもある。殺虫剤を使わず、病気にならないよう10日から15日おきに畑を5、6回掘り起こして世話をするそう。
2016.10.13(木)
文・撮影=小野アムスデン道子