特殊なケースとして可能だった法律婚
――2024年にネイリストのKILAさんと結婚されました。改めて、その経緯を教えていただけますか。
パートナーのKILAとは2021年からお付き合いをしています。彼は生まれた時は女性で、18歳ぐらいから見た目も男性として生活されているトランスジェンダー男性で、なおかつ性的指向も男性に向くゲイの方なのです。一般的にトランスジェンダーの方、例えば女性から男性になった方は、シスジェンダー・ヘテロセクシュアル(自身の身体的性と性自認が一致し、かつ異性愛者である人)の方と同じように、そのまま男性として女性を好きなることが多いのですが、彼はそうではなかった。性自認として女性から男性になった上で、性的指向も男性(トランス男性でありゲイ)なんです。ややこしいでしょう(笑)。
私は彼のことを男性としてみていて、男性として愛していますが、彼は戸籍を変更していなかったので、法律上は「女性」のままでした。だから我々は付き合った当初から「いざとなったら結婚できるんだね」なんて話していました。付き合って3年が経ち、将来のことを考えた時に、籍を入れるという選択をしました。
――結婚をしてから、関係性に変化はありましたか。
全くないですね(笑)。ただ、安心感はあります。例えば自分がどこか出先で倒れたり、急に意識がなくなって……という時に、パートナーが法律で認められた「配偶者」であるということは、やはり強い権利だと思うので。
ただ、これは私たちがたまたま「特殊なケース」だったからできたことに過ぎません。何十年も連れ添っている同性のパートナー同士が、こうした権利を与えられない現状は、やはり変えていかなければならない。入籍までのプロセスは、現行の婚姻制度がいかに不平等かを考える時間でもありました。
――ドリアンさんがおっしゃる通り、お二人は今の日本の法律の枠組みの中でたまたま男女として法律婚が可能でしたが、同性婚はいまだ認められていません。本来、婚姻制度とは何のためにあるべきだとお考えですか。
いわゆるヘテロセクシュアル(異性愛者)のみなさんの場合、例えば想い合った男女は当たり前に結婚という選択肢が浮かぶと思うんですが、まず我々にはその選択肢がない。結婚はできないと常に思いながら生きてきた中で、「結婚は何のためにするんだろう」ということを人一倍考えざるを得ない立場にあったと思います。
ではなぜパートナーシップ制度ではだめなのか。行政が行うパートナーシップで賄える保障と、国家が認める結婚で賄える保障が違いすぎるということもあります。パートナーシップ制度だけで賄おうとしても法的効力が伴わないものが多く、手続きも婚姻に比べてとても煩雑なんです。ただ結婚式をあげて「おめでとう」と言われる、“花嫁花婿”になりたいわけではなく、権利や保障を求めて婚姻の平等を望んでいる当事者は多いと思います。
考えてほしいのですが、婚姻の平等が叶ったとして、当事者たちは圧倒的に幸せになりますが、当事者でない人たちの生活にはほとんど影響はありません。利用可能なシステムが一つ増えるだけで、反対する人は自分が利用しなければいいだけの話。「同性婚は絶対嫌だ」と感情的に拒絶する方を見ると、もはや「何があったの?」と心配になってしまいます。他人の幸せの選択肢を奪う理由にはなりませんから。
