約6000万円の結婚指輪を首都高速から投げ捨てた!

 1997年にホイットニーが来日した際、ボビーが浮気してると聞いて怒り狂った彼女が約6000万円の結婚指輪を首都高速を走る車の窓から外に投げ捨ててしまう事件がありました。いまでも赤羽の方に落ちてるんじゃないかっていう都市伝説もあるくらいです。ただし、見つけても拾うのを躊躇するほど彼女の晩年は不運続きなんです。

 というのも、2012年2月、ホイットニーは翌日のグラミー賞授賞式に出席のため宿泊中のホテルで突然の死を遂げます。死因は入浴中の溺死。長年摂取していたコカインの影響による心臓発作の結果でした。

 不幸はそれだけではありません。奇しくも、娘のボビー・クリスティーナまで母親と同じ状況で2015年7月に亡くなってしまったんです。浴槽の中でうつ伏せのまま意識不明の状態で発見された彼女は、まだ21歳の若さでした。

 僕は2010年2月にホイットニーが最後のツアーで日本に来たとき、さいたまスーパーアリーナの最前列で観たんですけど、ボビー・クリスティーナもすぐ近くの席にいたんです。“うわ、ボビーにめっちゃ似てるやん!”と思いました。

 そのツアーはマイケル・ジャクソンが急死したため、彼の映画『THIS IS IT』に出ていたダンサーをホイットニーが引き取って自分のライブで踊ってもらっていたんですけど、とにかくホイットニー自身がやる気なくて、MCでも「しんどい、しんどい(I'm so tired)」って何度も言うんです。

 大ヒット曲「オールウェイズ・ラヴ・ユー」もキーを下げて歌うし、会場もシーンとなってて。僕も「あんなんじゃダメだ」、最低のライブだと思っていたら、その丸2年後に訃報が。

 彼女の場合、自分だけでなく娘さんまで亡くなってしまったわけですから、80年代のスーパースターのなかでも一番不幸だったといえるかもしれません。ひとりの女性として、やはり弱かった。彼女はずば抜けた美貌と歌唱力があり、スターになったけれど、そのあとどう振る舞うか。世の中では最初の夫ボビーが悪いということになってますが、僕はホイットニーにも責任があると思ってます。

2015.12.30(水)
文=秦野邦彦
撮影=榎本麻美