マレー半島とボルネオ島北部にまたがる常夏の国、マレーシア。実はこの国、知る人ぞ知る美食の国なのです。そこでこの連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。多様な文化が融け合い、食べた人みんなを笑顔にする、とっておきのマレーシアごはんに出会えますよ。

中国系マレーシア人のソウルフード、バクテー

マレー半島南部の町「クラン」がバクテー発祥の地。昔、ここで働く労働者が、肉の骨からとったスープをお茶がわりに飲んでいたので「肉骨茶」という名前がついた。

 「肉骨茶」と書いて「バクテー」。漢字だけ見ると、「どんなお茶?」と思う人がいるかもしれませんが、これはお茶ではありません。漢方スープで豚肉を煮こんだ料理。醤油系のやさしい味わいで、漢方の匂いはひかえめ。たとえば韓国のサムゲタン、中国の火鍋に比べると断然食べやすく、日本でもアジアごはん好きの間では、知名度をぐんぐん上げている料理です。

 こってりした肉料理のように見えますが、豚の余分な脂を取り除くために茹でこぼしをしている店が多く、意外なほどあっさりしています。

 さて、ひと口にバクテーといっても幅広く、「土鍋タイプ」「小皿タイプ」「海鮮入り」「肉無し」といった様々なスタイルがあります。そしてさらにお隣のシンガポールにも「バクテー」が存在し、実はマレーシア VS. シンガポールの熱~い“バクテーバトル”が繰り広げられているのです。このバトルのお話をする前に、まずはマレーシアのディープなバクテーワールドにお誘いしましょう!

町を歩いていて漢方の香りがぷ~んと匂ってくる場所があれば、そこはバクテー店の近く。バクテーは滋養強壮にも効果があるので、旅の疲れも癒してくれる。
スープは白いごはんにかけて、お茶漬けのようにさらさらっと口に流しこむ。にんにく醤油をちょっと垂らせば、さらに美味。

 まずご紹介するのは「土鍋タイプ」。長時間煮込んだ熱々のスープがたっぷり入っています。血液サラサラ効果のある「当帰」、余分な熱を取る「玉竹」など10種以上の漢方を使い、野菜は、えのき、レタス、湯葉など。スープが薄くなるのをさけるために、水の出る野菜はあまり入れません。口のなかでほろっと崩れるやわらかな豚肉もおいしいのですが、それを凌駕するぐらい絶品なのが、スープ! 豚肉のうま味がたっぷりしみ出ていて、ほんのり甘め。スープは無料で注ぎ足してくれるのでゴクゴク飲んでも大丈夫。

※4ページ目に、現地マレーシアのバクテー専門店の様子を動画で紹介しています! 土鍋から沸き立つ湯気に漢方の香りが漂ってくるよう。ぜひお見逃しなく。

最近ではいつでも食べられているが、本来バクテーは朝ごはん。週末ともなると、店は朝から大賑わい。漢方パワーで、1日を元気に過ごす。

 次は、発祥の地クランのバクテー、そして現地で人気急上昇の汁無しバクテーです!

2015.02.19(木)
文=古川 音
写真=古川 音、三浦菜穂子