Jポップのリスナーにルーツ音楽の素晴らしさを伝える

山口 一般的には、ルーツミュージックに対する敬愛が強すぎると、作品には今日的なサウンドとか色合いが失われてしまいがちで、ポップスとしては弱くなってしまう。だから、よりポピュラーに、そして新しい装いにしていこうとしますよね?

伊藤  そう、その時点でただのポップスに成り下がってしまっていることも多いんですけど。まぁレコード会社や事務所にもっと売れる音楽にしろって言われてやっているアーティストも多いと思うので、彼らを責めるわけではないですが……。でもSuperflyは違いましたね。もちろん彼女の迫力ある歌唱力が一番の魅力ですけれど。

山口 そうですね。Superflyは、その歌唱力もさることながら、ルーツミュージックへのリスペクトを前面に打ち出しながら、今日性を強く持っている。ファッション性も兼ね備えていて、そこにも音楽へのリスペクトをにじませながら、カッコイイ、今っぽい姿にまとめている。そこが魅力だし、結果的に、Jポップのリスナーに、ルーツミュージックの素晴らしさを伝える入り口の役割も担っていると思うんです。

伊藤 そうだと思います。今までブルースなんて聴いたことなかった人たちを、「なにこれ? カッコイイじゃん!」って自然に引き込んでいますね。

山口 多くのアーティストは、ディープな音楽リスナーだった過去を持っていますよね? 僕はよく言うんですけど、「アーティストは必ず、誰かの音楽を聴いて人生を踏み外して、音楽を志している」(笑)。

伊藤 アーティストに限らずじゃないですか、山口さんもその一人では? ミュージックピーポーなら必ず、自分にとってアイドルのアーティスト、リスペクトする音楽家はいるものですよ。

山口 その通りですね(笑)。ちなみに、 Superflyのライブに来るファンは、40代の音楽が好きそうな男性ファンと、彼女と同世代の女性ファンの2種類だそうですよ。なんか納得がいくし、好きになったら、長く聴き続けてくれそうな良いファンを掴んでいる気がしますね。

伊藤 やっぱそうですか。40代の男性ファンだけでなく、同世代の女性ファンがいることが大きいですね。通のおっさんばっかりだった居酒屋に、料理が美味しいと若い女性が殺到したことで大人気居酒屋に化けちゃった感じですね。

山口 歌詞も良いと思うのですが、作詞家伊藤涼の目からはいかがですか?

伊藤 作詞は「愛をこめて花束を」のいしわたり淳治(このときは越智志帆、多保孝一の3名での共作)。だからかタイトルも似てますね(笑)。内容的には、女性すぎない感じが、ふわふわせずにシャープネスを出せているし、良い意味で隙がある感じが“付け入りやすい”ですね。

山口 なるほど。“付け入りやすい”歌詞ですか? ユーザーとの回路が開いているということですね?

伊藤 そうです。“大人の恋愛”を思わせるんだけど、結婚とかとは全然ちがう次元の話のように感じさせる。恋愛なんだけど、男女というよりは、人間同士の繋がりというか、生きていくための繋がりという感じ。悪く言うと色気を感じないんだけど、良い意味で動物的で野性味が溢れている。

山口 よくわかります。

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2014.11.15(土)
文=山口哲一、伊藤涼