あまった食材の使い切りや食べ切りって、いわば冷蔵庫内の“帳尻あわせ”。そして時に、おいしいものを食べて発散するのも“心の帳尻あわせ”的なこと。食と気持ちの帳尻あわせライフをつづる、フードライター白央篤司さんの連載です。

 本連載は、2026年10月30日(金)の更新をもちまして終了いたします。長らくのご愛読、誠にありがとうございました! 最終回は、秋味が恋しくなったときに、白央さんの手がすっとのびる「ごぼう」のお話です。どうぞお楽しみください。


秋が深まってくると、なぜかごぼうが食べたくなる

 清澄白河(きよすみしらかわ)で打ち合わせを終えての帰り道、「野菜のちから」に寄った。全国のすぐれた農家さんが育てた野菜をはじめ、良質な加工食品や調味料、パンやおそうざいも買える魅力的な場所。清澄白河に来ると、毎回つい寄ってしまう。

 今回惹かれたのは、秋から冬にかけてが旬のごぼう。太くて立派で、「きょうは俺を買っとけ」と言われたような気がしたのだった。

 ごぼうといえば定番はきんぴらだろうけれど、私はミートソースに入れたくなる。なぜか秋が深まってくると、食べたくなるもののひとつなのだ。

 作り方はいたって簡単、普通のミートソースに、細かめに切ったごぼうを加えて7~8分ほど煮込むだけ。市販のレトルトに刻んで加えて、煮てもいい。

 私は、にんにくと玉ねぎのみじん切りを軽く炒めて、あいびき肉を加えてさらに炒めるとき、刻んだごぼうも加えて炒め、あらごしトマト水煮を加え、ここに好みで赤ワインやケチャップ、ウスターソース少々、ドライオレガノ多めに加えて煮込んで作っている。セロリやにんじんは、あれば刻んで加える。仕上げにバターひとかけ加えるときもあるし、醤油をちょっと香らせたくなるときもある。

 ごぼうは細かくし過ぎず、食感が感じられる大きさにすると、食べごたえが増していい。肉とトマトの香りとごぼう、合うんだなあ……。なんか、秋っぽい味なのですよ。このソースでミートグラタンを作ってもおいしいし、オムレツの具にするのもいい。

 薬膳事典を開いてみたら、のどが弱い人にごぼうはいい食材らしい。乾燥する時期、のどを痛めやすい私にぴったりだ。旬の食材は、体の帳尻を合わせてくれるものだとよく思う。

 というわけで、きょうもごぼうを使おう。牛すじが手頃だったので、糸こんにゃくと煮込むかな。

 シンプルに酒、みりん、醤油、砂糖でじっくり煮ただけ。季節の変わり目は疲れやすいので、ちょっと甘めに仕上げる。ごぼうは牛肉のコクを吸うと何倍にもうまくなり、やっぱり相性良しだ。甘さに口が疲れたら、七味をふるか、からしをつけても。余った分はツレのお弁当に入れよう。

次のページ 3品目は卵でとじて「ごぼう入りのきつね丼」に