あんこは敬遠されていない

 発起人のひとりである稲葉さんが、明るく語る。

「10年の間には新しいスイーツをはじめ、さまざまなお菓子が増え、あんこや和菓子をめぐる環境も変わってきた。でも、ここはあんこを売るためにやっているわけではない。自分たちが楽しくやって、そこにいろんな人がジョインしてくれればいい」

 松﨑さんは大学卒業後、IT企業で働き、現在は200年以上続く老舗を率いる一方で、バンドのベーシストとしても活動する。音楽へのリスペクトがあるからこそ、最初はこのイベントで自らDJをすることに躊躇もあったという。

「でも、やってみるとすごく楽しかったんですよね。自分がライブハウスやクラブシーンで人とつながっていた頃の感じを思い出せたので。そんな最初の回は思い出に残っています」

 木村さんにとっても、10年という年月は和菓子と人との距離が変わっていく時間だった。

「あんぱんを片手にお酒を飲んでもいいし、音楽を聴きながら和菓子を食べてもいい。僕たち自身が楽しんでいることで、今まで和菓子に縁がなかった人が自然に入ってきてくれた。20~30代の若い参加者が増え、お酒を飲みながらもなかを食べる姿などを目にすることで、自分たちが思うほど、あんこは敬遠されているものではないと実感しました」

「空也」「木村屋總本店」「銀座 松﨑煎餅」。長い歴史を持つ老舗の名前だけを見れば、一見、DJイベントからは遠い存在に思える。

 けれど、昔と同じことを続けるだけが、必ずしも伝統を守ることではない。羊羹にお酒を合わせてもいい。あんぱんを片手にDJを聴いてもいい。老舗の当主が夜のフロアでレコードを回してもいい。伝統との距離を少し置くと、和菓子とは関係なかった人が突然、和菓子につながることもある。アンコマンたちは、声高に「文化継承」を叫ばない。

「『アンコマンないと』は、今後もゆる~く続けていきます」と山口さんは軽やかに語る。好きな音楽をかける。お酒を飲む。その横には和菓子がある。和菓子が自由になると、アンコマンたちも来場者たちも自由に解放される。それが、このイベントのチャーミングなところなのだ。

次回「アンコマンないと」開催情報

第3回 伊勢おかげ嬉楽祭 2026にて
開催日:2026年11月3日(火曜日・祝日)
開催時間:12:00~20:00
住所:三重県伊勢市宇治中之切町52
会場:伊勢・おかげ横丁
※詳細は、https://www.instagram.com/ise_okage_utasai/