誰でも参加できる、“夜あんこ”のイベント
もなかに羊羹、あんぱん、煎餅ーー。名菓が並ぶなか、流れるのはクラブミュージック、手にはお酒。そんな和菓子の自由な楽しみ方を“ゆる~く”続けてきた「アンコマンないと」が、今年10周年を迎えた。はじまりは、「空也」5代目・山口彦之さんと和菓子ユニット「wagashi asobi」稲葉基大さんの音楽談義から。伝統を大切にしながら、枠にとらわれない和菓子の楽しみ方に仲間が加わり、その輪は大きく広がっていった。
和菓子の楽しみ方を広げた、ひとつの“遊び”
取材したのは、10月1日木曜日の夜。仕事帰りの人々で賑わう東京・丸の内のダイニングバーP.C.M.(PUB CARDINAL MARUNOUCHI)でいつもとは違う光景が広がっていた。
DJブースから流れてくる音楽に、グラスを片手に談笑する人たち。その傍らにはもなかやどら焼き、羊羹、煎餅といったお菓子が並ぶ。クラブイベントのようでいて、パーティーのようでもあり、けれどこの日の主役は「和菓子」。誰でも参加でき、和菓子はなんと無料。好きなお菓子をつまみながら楽しむ。それが「アンコマンないと」だ。
音楽とお酒と、和菓子。一見すると意外な三つの組み合わせを10年間続けてきたのが、銀座「空也」5代目の山口彦之さんをはじめ、「銀座 松﨑煎餅」8代目の松﨑宗平さん、「木村屋總本店」代表取締役社長の木村光伯さん、「wagashi asobi」の稲葉基大さんら、“アンコマン”たちである。しかし、このイベントはもともとそんな大々的なプロジェクトでも和菓子振興を目的にしたものでもなかった。むしろ、もっと個人的で、もっと自然なものだった。
和菓子を愛する老舗御曹司が、DJになった日
「アンコマンないと」が始まったのは2016年。同年9月にパリで開催されたイベントに参加した山口さんと稲葉さんが、音楽の話で盛り上がったことがきっかけだった。稲葉さんは当時、自分で淹れたコーヒーと、その日に聴くCDをSNSに投稿していた。ジャンルはクラシックからレゲエまで幅広い。その投稿を見た山口さんが「音楽が好きなんですね」と声をかけたことから、二人の会話は一気に弾んだ。
和菓子のことよりも、まずは音楽の話。好きな曲、好きなアーティスト、音楽の楽しみ方。そんな会話を重ねるうちに、「和菓子と音楽を組み合わせたら面白いんじゃないか」という発想が生まれた。
