ロンドンのシェイクスピア・グローブ座で『リア王』を演じ、成功を収めた大物俳優・高瀬川玄(役所広司)。ところが、2年ぶりに帰国すると、ワクチンの影響で家族も仕事仲間も彼のことをすっかり忘れていた――。Netflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』は、誰からも忘れられた俳優が人生をやり直すヒューマンコメディです。
手掛けたのは、『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』『不適切にもほどがある!』など、数々の話題作を生み出してきた宮藤官九郎さんと磯山晶さん。長年タッグを組む名コンビは、主演の役所広司さんに当て書きした主人公に、どんな思いを託したのか。物語が生まれた背景や制作の裏話を伺いました。
本記事は、公式シナリオブック刊行に寄せて実現したおふたりの対談の一部を抜粋、再編集したものです。より濃密な対談の全篇は公式シナリオブックでお楽しみいただけます。
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忘れられている設定が何より大事
――「俺のこと、なんか言ってた?」では承認欲求が大きなテーマになっています。物語の軸に据えることは当初から意識されていたのでしょうか?
宮藤 承認欲求という話は最初からしていましたよね。
磯山 そうですね。忘れられてまっさらになった状態で人生を生き直すことになったら、誰に認められることで幸せを感じるのか、という話はしましたよね。
宮藤 ただ、1話の脚本を書き上げた段階では、この先どうするのかはっきり決まってなかったんです。
磯山 Netflixの方とお話したときに、「承認欲求というのは『マズローの五段階欲求説』によると上から2番目ですよ」って言われて。
宮藤 「それ何ですか?」って、そこから慌てて足したんでしたよね。
――お二人が組まれた作品にはSFのようなアンリアルな設定が多い印象があります。SFの要素は取り入れる予定だったのでしょうか?
磯山 そうじゃないのもありますよね(笑)。SF要素が入った方がよりテーマがわかりやすくなるのであればそうする、というくらいだと思います。
宮藤 そうですね、今回の場合もまずは「忘れられる」っていうのが、大事で。どう忘れられるのが面白いですかねって色々相談しましたよね。映画『イエスタデイ』のように、自分以外の人類がビートルズを忘れちゃうみたいなのがいいんじゃないですかね、とか。システム障害みたいなことで記憶がなくなるのがいいのか、ワクチンがいいのかというところは結構悩みました。ワクチンだと笑えないんじゃないかって意見もあって、やめましょうかって一度なったんですが、重要なのはむしろ「忘れられる」ということだけなので、結局ワクチンにして、後から他の要素をつけていきました。
結果的には、ワクチンにして良かったなって思いますね。コロナがあったから、ロックダウンについて説明しなくてもわかってもらえるじゃないですか。
磯山 一般的に薬とかワクチンの副作用って正直まだわからない部分もあるじゃないですか。誰かのことを忘れていることもあるかもしれないですもんね。
