営業の仕事は「アウェイのショータイム」

――その後の、一般企業での会社員時代のことも伺いたいです。

 大学を5年通って中退したのですが、親から「働いて家にお金を入れなさい」と言われました。新卒ではなかったので、転職サイトを使って、学歴よりもやる気を重視してくれるベンチャー企業に潜り込みました。まぁ私はステージ度胸だけはあったので、面接がわりと得意だったんです。なので、採用担当の方に「こいつは見込みがある」と上手くだまくらかすことができまして(笑)。

 香水や化粧品を扱う商社兼メーカーで、最初の5年間は営業職として小売店への提案や商談に奔走する毎日でした。ただ、営業としてキャリアを積むうちに、だんだんと月次の数字に追われるのがしんどくなってきて……。頑張って予算を達成しても、翌月になればまたリセット。さらに予算だけでなく昨年実績を超えなきゃいけない。まるで「賽の河原の石」を積んでいるような心境になり、部署異動を希望してPRに転向しました。PRは3年担当し、その会社は計8年勤めました。

――営業とPR、それぞれで得たものはありましたか。

 非常に大きかったですね。営業部時代は体育会系なノリも多かったので、ゲイであることはおおっぴらにはしていませんでした。PRに移った時も最初は営業時代のノリでやっていたんですが、その部署のトップの方はもう私のセクシュアリティのことも知っていたので、「大竹くん、もう“オネエ”全開でやってよ」と言ってくれたんです。「あら、いいんですか?」という感じで、途端にしなやかさが増しました。PRの現場では、その個性が大きなアドバンテージになり、楽しく活動できましたね。その後、SABONやReebokでのPR経験を経て、ようやく「女装一本で食っていこう」と決意しました。

――会社員時代の経験が、今の活動に生きていると感じることはありますか。

 一つも無駄なことはなかったと断言できます。まず、営業職での商談やプレゼンは、私にとって「アウェイの場所でやるショータイム」と同じでした。腕組みをして見ている相手を、自分のパフォーマンスでいかにファンにさせるか。そのプロセスはショータイムと同じなんですよね。

 PRに関しても、「この(商品の)魅力を、いつ、どこで、誰に、どう届けるか」というマーケティング思考は、個人事業主でもあるドラァグクイーンの活動に非常に親和性が高いんですよ。どこでどういう発信をするかという意味で、自分の中ではとてもしっくりきました。いわゆるアーティスティックで職人気質なクイーンの在り方とは少し違うかもしれませんが、私はこのマーケ的な発想でずっとやってきた感じです。

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