染五郎は若き光源氏のイメージにぴったり

——本作の光源氏役として市川染五郎さんが起用されたのはどんな理由からですか?

 染五郎さんは、清らかな雰囲気を持った俳優です。若き光源氏は、間近で見ると女性と見間違うほど美しいと原典に書かれていますが、そのイメージにぴったりだと思いました。

 昨年に引き続き、今年は『火の鳥』でもご一緒しましたが、光源氏を演じた時とは全く違う印象でした。これからは大人になっていくことでもっと男らしくなっていくと思いますし、25歳になる頃にはさらに変わっていくでしょう。

——若い世代の俳優に、先輩として伝えたいことはありますか?

 「こうしなさい」という指導ではなく、一緒に作品をつくる仲間として意見を交わすことを大切にしています。

 舞台は宣伝写真、美術、音響など多くの要素が絡み合って成立します。そうした全体像を実際に体験することは学校では学べないことです。

 染五郎さんはこれから“ものづくりを担う人”だと思いますので、ともに舞台を作る経験を通して、ものすごくたくさんのことを吸収しています。

 また染五郎さんには、自分の意見をしっかり言い、責任を持って行動することを伝えています。

 『火の鳥』では、火の鳥を獲りに行くのを阻むのは何かと考えたときに、染五郎さんはいろいろと自分で調べてきて、「それは盗賊ではなく、動物同士であるべきだから狼がいい」と提案したんです。根拠となる資料もちゃんとありました。ですから「自分が提案したのだから、殺陣と振付の方とは自分で話をしなさい」と任せて作りました。

2025.09.26(金)
文=山下シオン
撮影=鈴木七絵(ポートレート)、岡本隆史(舞台写真)