「言葉ってナイフにもなるじゃないですか」への答え
現代社会ではインターネットの普及により、誰もが簡単に情報発信できるようになった一方で、言葉の持つ影響力に対する意識は希薄になりがちです。不用意な発言が誰かを傷つけたり、差別を助長したりする可能性があることも、私たちは常に心に留めておく必要があります。
9話でみどりは言葉に対する不安をこう語りました。「言葉ってナイフにもなるじゃないですか。もちろん今はわかっています。悪いのは言葉じゃない。使い方と選び方って。でもまだ全然自信ないんです。ちゃんと使えてるか。選べてるかって」。
言葉のナイフに対して、「そんなこと気にするな」と人は言うかもしれません。しかし、今まさにそのナイフで刺され、血を流して痛みにうめく人がいたとしたら、どうしたらいいのか。みどりの問いかけに、松本はこう答えます。
「言葉のナイフを抜くことができるのは、止血して手当てができるのは、また、『言葉』なのではないでしょうか」。言葉と誠実に向き合い、言葉を潤沢に的確に使うことができれば、傷ついた人を救うこともできるのかもしれません。

辞書は、言葉の海を渡るための「舟」であり、羅針盤です。それは、言葉の海で迷子にならないための道標であり、より良い社会を築くための基盤。ですが、最終的にその舟をどこへ向かわせ、羅針盤をどう読み解くかは、私たち一人ひとりの手に委ねられていることを、『舟を編む』は教えてくれます。
舟を編む 〜私、辞書つくります〜(NHK総合)
最終回 8月19日(火) 午後10:00〜午後10:45
最終回(再) 8月22日(金) 午前0:35〜午前1:20

2025.08.19(火)
文=綿貫大介
写真=NHK