信仰の対象の山としても親しまれた鳴神山には多くのハイカーが

 山頂のすぐ手前の「肩の広場」には雷神岳神社が鎮座し、山頂にも雷神が祀られた小さな祠(ほこら)が残っています。特徴的なのが鳥居の両側のオオカミの像。一般的には狛犬や稲荷像が多いなか、桐生では古くからオオカミは神の使いであるとして、信仰の対象とされてきたのだそう。

 山に登ることを通じ、その土地に根付く文化に触れる。それもまた山旅の楽しみ方のひとつです。

 雷神岳神社を越えれば山頂まではもう直ぐ。1時間半ほどのトレッキングを終え到着すると、そこには360度のパノラマが広がります。

 この山頂の見晴らしもハイカーたちから愛される所以。天候の好条件がそろえば、群馬県最高峰の日光白根山や人気の赤城山はもちろん、富士山や八ヶ岳をも望むことができます。晴れた日は、山頂に建てられた山座標識をたよりに、名峰たちをぐるりと眺めるのも楽しい。この日も多くの地元ハイカーで賑わっていました。

 「鳴神山」の名前の由来には、どうやら諸説あるようですが、古くから雷神が住まう山として崇められていることと結びついているのだそう。山頂で一緒になった、長年この山に登っているというおじいさんが「地形条件なのか、この辺りは雷がよく鳴る。だから『鳴神山』と呼ばれているんだよ」と教えてくれました。こういう出会いもトレッキングの醍醐味ですね。

2025.08.08(金)
取材・文=宮﨑真里江
写真=釜谷洋史