「あきらめる」「自分をあきらかにする」活動=「らめ活」

――表現の場ではものすごいパッションで振り切ったことをなさるのに、エッセイによるとオフの日は12時間寝ているとか、こたつと一体化して「こたつむり」になりかけていたとか真逆な一面が描かれていて、ギャップに驚きました。
「表現したい!」という積極的な気持ちも、「めんどくさーい」という自堕落な気持ちも両方私の中にはあるんですよね(笑)。
でも、この本を読み返して改めて気づいたのですが、自分から第一歩を踏み出したことはないのかもしれない……。両親に連れられてミュージカルやコンサートを観て、ミュージカルを好きになってからは母に勧められて最初は渋々ダンススクールに通い始めましたし、30歳を過ぎて「そろそろどうにかしなきゃダメよ」と母に言われて一人暮らしを始めました。お尻を蹴飛ばしてくれてマジありがとう! です(笑)。
事務所に入って俳優を始めることになったのも、共演した大先輩のお声がけでしたし、他のお仕事もエッセイを書くことになったのも、いろんな方からの「やってみませんか?」から始まっているんですよね。
――人の提案に身を委ねたから、波に乗ったということでしょうか。
そうですね。20代の頃は、自分はこんな小物じゃない、もっとできるはずと思い込んでボロ雑巾のようになっていた時期もありました。今思えば傲慢でしたね。「自分が、自分が」と思いながらやっている時はうまくいかなかった。
30代になってエゴを手放して、私を求めてくださる場所で、私自身も楽しいと思いながら、みんながいい雰囲気で微笑みの時間を過ごせるのがいいと思えた頃から、好転していった気がします。

――エゴを手放すのは容易ではないですが、自意識に縛られている20代の若者にアドバイスするとしたら、どんな言葉をかけますか?
本にも書きましたが、「あきらめる」「自分をあきらかにする」活動=「らめ活」は、ぜひお勧めしたいです。
そういう頃って、やりたいことと理想の自分に隔たりがあるんですよね。自分が本当にやりたいと思っていることは、果たして自分の活躍できる場所なのか。まず、そこをあきらかにすることなのかなと思います。
人を見て、「あんなふうになりたい」と思ったとしても、それが自分の色に合うとは限りません。自意識に縛られて葛藤する時期は、自分を知る「診断時間」なんじゃないかなと思います。
――すぐさま、あきらかになるわけではないと?
やはり時間はかかると思います。一つのことに固執せずに、いろいろなことをやってみて、たくさんの人に会い、いろんなことを言われて迷い、失敗して、自分をあきらかにしていく作業が必要なんだと思います。
2025.08.04(月)
文=黒瀬朋子
写真=平松市聖