「メイク再発見」ってページ、覚えてる? 

藤原 「滲むのは皮脂やアイシャドウ、マスカラの油分のせい。だから下まぶたのまつ毛際までお粉をのせてね。えっ? シワが目立ちそう? シワがでるのはもっと下側だから大丈夫。もっと顔のパーツを細かく分けて、際の部分にだけパウダーを塗ってくださいね」ってね。

齋藤 こうやってポンポン情報をくれるから、おしゃべりがそのまま記事になる。1カ月で何十ページも作ったよね。「メイク再発見」(1982年)ってページ、覚えてる? 初めてやったビューティの大企画。

藤原 読者の熱はすごかったわよね。誰もが疑問に思っていたけれど、具体的な言葉やイメージに表せなかったテーマを明確にしてくれた。それに刺激されて、ぶわーっとビューティ熱が広がっていくのを感じたもの。私もね、薫ちゃんが言葉をくれると映像が頭の左上にパッと浮かぶの。それをモデルさんの顔に描き写していく。

齋藤 初めて聞いた。すごい。

迷っている姿、見たことない

藤原 共感覚の一種なのかしら。音が色で見えるとか。私の場合は言葉が映像に変換されるの。だから何百個もあるアイテムから、お目当ての色もパパッと選べるの。

齋藤 確かに迷っている姿、見たことない。

藤原 私、読者変身ページもすごく楽しかった。最初はみんなすっぴんで恥ずかしがっているんだけれど、ファンデーション、アイシャドウ、アイライン、とメイクが進んでいくうちに、どんどん表情が変わっていくの。「え、これが私?」って、鏡にぐんと近づく。自信がつくと瞳に星が生まれるの。そうなればカメラの前でも物怖じせずにポーズや目線を決められちゃう。あの輝く瞬間に立ち会えるのが本当に幸せだった。

2025.07.04(金)
文=岩嶋悠里 
写真=平松市聖