舞台稽古中の大けがを経て愛之助さんが感じたこと

愛之助 僕も全く不老不死になりたいとは思いません。沢城さんがおっしゃった通り、限りあるものの方が楽しいし、美しい。その限りある中で頑張って生きようというほうが、人間らしく頑張れると思います。ゴールがなかったら、何を目指して走ったらいいのか、よくわからなくなる。限りあるものだから大事にもできるし、ひとときを大切に過ごせるのだと思います。
実は僕は去年の年末に、舞台稽古中、大けがをしたんです。本当に生きていてよかったなと感じましたし、あらためて寿命といいますか、限りある命を大切にしなければいけないということを学んだ気がします。何でもない会話ができることの幸せさ、「美味しいね」と誰かと言いながらご飯を食べられることに感謝しなければいけない。ですから、会いたい人には、「また今度」ではなく今会おうと思うようになりましたし、今やらなくてはいけないことに全力を出せることの幸せさを大切にしなければいけないと、53歳になって学ばせていただきました。

――お元気になられて本当によかったです。最後に、おふたりから本作の見どころもぜひお聞かせください。
愛之助 僕は、ムオムが生まれ変わっていくところを観ていただきたいです。言葉を覚えていく重要な成長過程です。沢城さんのお気に入りのシーンはどこですか?
沢城 私は、今回いちばんリテイクが多かった、不二子ちゃんが燃えさかる火の上に立たされて、「熱っ、熱いっ!」とジタバタするシーンをぜひご覧いただきたいです。
本作は、こんなにも「泥棒」という概念を貫いている硬派な作品であるにもかかわらず、私が担当しているのがどこかコメディエンヌのポジションなのです。あのシーンは、「ちょっと飛び越えてみましょうか、不二子ちゃん」と言われて、三枚目寄りにしたのですが、不二子からバカバカしさが香っていいなんて初めてだったので、かなり戸惑い、何回も録り直しました。
これまで「三枚目ポジション」といえば、五ェ門だったんです。五ェ門が恥ずかしがるとか、少し天然っぽい発言をするみたいなことで、成り立ってきたところがあったのですが、今回は私か! そしてこのシーンか! と思いながらやらせていただきました。「あちぃ」のセリフの中に、「少し三枚目な不二子ちゃん」がうまく出ているといいなあと思います。
愛之助 しっかり出ていましたよ! 存分に堪能させていただきました。公開されたらまた劇場で楽しませていただきます。
》【前篇】まるでジム・キャリー? 片岡愛之助の怪演 ルパン三世最新作で初共演した沢城みゆきが明かす“感動の瞬間”
沢城みゆき(さわしろ・みゆき)
東京都生まれ。青二プロダクション所属。1999年『デ・ジ・キャラット』新人声優オーディションで審査員特別賞を受賞、デビュー。2011年のテレビスペシャル「ルパン三世 血の刻印 ~永遠のmermaid~」より峰不二子の声を引き継ぐ。「ゲゲゲの鬼太郎(6期)」(ゲゲゲの鬼太郎役)「鬼滅の刃 遊郭編」(堕姫役)など、数々の話題作に出演するほか、「報道ステーション」(EX)などテレビ番組のナレーションでも活躍している。
片岡愛之助(かたおか・あいのすけ)
1972年大阪府生まれ。1981年十三代目片岡仁左衛門の部屋子となり、南座『勧進帳』の太刀持で片岡千代丸を名のり初舞台。1992年六代目として片岡愛之助を襲名。2023年には“歌舞伎版「ルパン三世」”となる『流白浪燦星』でルパン三世役を演じ、今年9月南座での再演にも出演する。歌舞伎のみならず、俳優として活動の場を広げ、映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』『はたらく細胞』やNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」等に出演。2024年文化庁第74回芸術選奨演劇部門文部科学大臣賞を受賞。

『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』
全国公開中!
原作:モンキー・パンチ
監督:小池健
脚本:高橋悠也
音楽:ジェイムス下地
クリエイティブ・アドバイザー:石井克人
主題歌:B'z “The IIIRD Eye”
アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム
製作/著作:トムス・エンタテインメント
配給:TOHO NEXT
原作:モンキー・パンチ ©TMS
https://www.lupin-3rd.net/zenigata-twolupins/

2025.07.05(土)
文=相澤洋美
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=沢城みゆき:チチイカツキ、片岡愛之助:ヘア=山崎潤子/メイク=青木満寿子
スタイリスト=沢城みゆき:河野素子、片岡愛之助:九