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不老不死になりたい?

愛之助 ムオムを生み出してくれたのはマモーです。マモーがお父さんでもありお母さんでもあるので、ムオムの中にどこかマモーのニュアンスも残したほうがよいのではないかと考え、少し“マモーが入っている感じ”を意識しました。たとえば、ストーリーの前半で、ムオムがお料理をするシーンがあります。そこは本家マモーとかぶらない程度に、でもどことなくマモーを感じるように、自分なりにいろいろ考えてやらせていただきました。

――作品のテーマでもある「不老不死」については、おふたりはどのようにお考えですか? なりたいと思われますか?

愛之助 どうですか、不老不死?

沢城 私は不老不死といえばまず、吸血鬼を思い浮かべます。仕事柄、吸血鬼の役をやらせていただく機会も多いのですが、400歳を超えてくると、だいたいみんな心が機能しなくなってくるんです。つまり、身体には寿命がなくなったとしても、心には寿命があるということなのだと思います。それが、心あるものの最大のハードル。だから、たとえ肉体が不老不死になったとしても、心のハードルを超えられる人はいないのではないかと思うと、あまり「なりたい」とは思いませんね。

愛之助 「心の寿命」は確かにありますね。

沢城 そうなんですよ。「生きている」状態にも飽きてきちゃって、「劇場でお芝居をして生きていることを実感する吸血鬼」の役もあったくらいです。「お芝居の中なら、喜怒哀楽を取り戻せる」って、もう究極ですよね。

 そういうことを考えていくと、もし私が不老不死になってしまったら、舞台でシェークスピアでもやりますかね。「ジュリアス・シーザー」のブルータスの妻、ポーシャの役は死ぬまでに一度やりたいと思っているので……。

愛之助 沢城さんなら、不老不死にならずとも、今すぐにでもできるじゃないですか(笑)。

沢城 いやいやいや、まだまだです。愛之助さんはいかがですか? 映画の中では、しばらく不老不死として生きていらっしゃいましたけれども。

2025.07.05(土)
文=相澤洋美
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=沢城みゆき:チチイカツキ、片岡愛之助:ヘア=山崎潤子/メイク=青木満寿子
スタイリスト=沢城みゆき:河野素子、片岡愛之助:九