男は中年になったら皿も洗わなくなる

確かに時代は変わりました。男性も積極的に子育てするようになってきている。でも、何千年もの間、繰り返されてきた男女の不平等な歴史はどうにもならへん。男は外に出たら7人の敵がおるっていうけど、女はもっと大変ですよ。雨降ってきたら「あ!」って勤め先で洗濯物のことを思い出すのは女だけです。
昔は女の人って、外食したって子どもを抱えて、全然食べられへんかったんですよ。ほんで、お義母さんと旦那さんが食べてる。子どもが泣くから気を遣って中庭に出たりね。私はうどんの汁が好きなんですよ。でも、息子が小さい頃は汁が飲めなかった。ちょっと大きくなってから、うどん屋行って汁を全部飲んだわ。
男ってね、若い頃「結婚したら僕が皿を洗うから」って言うてた人でも、45、46歳になったら、それまで内側に眠ってた男性優位のポジションが出てくると思うねん。誰が決めたんよ、男の方が偉いって。もうね、中年になってきたらお皿も洗わない。でも、まともに相対したら、歴史に押し潰されんねん。当たり前やん、ずっと不平等だったんやから。現実はね、諦めなあかん時もある。これが難しい。人間というのは反発するからね。反発するから向上もするんだけど、ある程度の年齢になったら諦めるっていうのかな、物事がわかります。それは自分の心を痛めないための、生活の知恵でもある。皆さんも、年齢とともに備わってきます、自分を守るための杖が。「仕方がないな。人生は続くから」って思えるようになるんです。
映画『風と共に去りぬ』で、スカーレット・オハラが「そうだ、明日考えよう」って言うセリフが、私は大好きでね。南北戦争に負けて何もなくなった時に「明日考えよう」って。ズボラなように取られるかわからへんけども「明日考えよう」はいいですよ。明日考えよう。一回寝よう、一回休もう。だって答えは出ないもん。出ないというか、答えなんていらん。「明日考えよう」。希望のある、ええ言葉やね。
上沼恵美子(かみぬま・えみこ)
1955年生まれ、兵庫県出身。「海原千里・万里」の海原千里としてデビュー。77年にテレビディレクターと結婚後、芸能界を引退して専業主婦に。翌年、「上沼恵美子」として復帰。以来、関西を中心にテレビやラジオで活躍。2021年からはYouTube公式チャンネル「上沼恵美子ちゃんねる」もスタート。
続きは「CREA」2025年夏号でお読みいただけます。

2025.06.22(日)
文=西澤千央
写真=文藝春秋
CREA 2025年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。