古くは1985年スタートの「バラエティー生活笑百科」(NHK)、最近では『週刊文春』の連載や自身のYouTubeでも。昭和、平成、令和の3つの時代にわたって40年以上、日本人の悩みに答え続けてきたのが上沼恵美子さんだ。ナニワの主婦代表が貫いてきた、人生相談の極意とは?


人生相談の極意は何ですか?

 私、6月18日に新曲『人生泣き笑い』を出すことになりましてね。死に土産というか、最後のチャレンジというか。イマドキCDってちゃんちゃらおかしいわって言われるのはわかってるんだけど、いいんです。歌にしてもYouTubeにしても、こういう取材にしても、お金儲けではなくて、どっちか言うたら「お返し」してるわけですよ。ファンの人に「あ、えみちゃん出てる」って思ってもらいたい。年齢いってまだ仕事をしてるなら、何か貢献しないと。今まで稼がせてもらったから。

 テレビのギャラで私は別荘を4、5軒持ちましたんでね。マネージャーにお金使い込まれたこともあったけど、大きな事務所には所属せず、自分だけを頼りに47年やってきた。でもお金は持って死ねないしね。悩みもあるけど、前向きに行こうと思ってます。もうね、70歳でしょ。死への扉を開けたんですよ。でも決して人生やりきったわけじゃない。

 他人の相談受けてるけど、私の人生大失敗。20歳の時に今の主人に夢中になった。8歳年上のテレビ局のディレクターで品があって知的で、もう息ができないほど好きになった。22歳で結婚しました。でもあれが失敗の始まりで……。

 離婚はしてません。長年別居してるとインタビューで話してからは、「離婚しないんですか?」ってよく聞かれます。でもほんまに陳腐な答えで悪いけど、離婚も邪魔くさい。48年一緒にいて、これから別れるとなったら色々やらないといけないことあるし、ましてや私あの人にお金あげなアカンもん。財産分与しないといけない、ほとんど私が稼いだのに。

 そりゃあ、真剣に離婚を考えたこともありました。8年ぐらい前かな、まだ一緒に住んでいた頃、夫婦で旅行したフィレンツェで「離婚してください」って言ってみた。主人、怒りましたよ、机をバーン叩いて。それで弁護士を立てて色々やったんだけどもまとまらず、うやむやになっちゃった。でももうそれだけ私は嫌いだった。「夫源病」って知ってます? めまいして頭痛くなって。ヘルペスにもなった。体に夫への拒否反応が出るんですわ。浮気者とか暴力を振るうとかならまだわかりやすいんですけど、そういうのは全然ないから難儀やねんな。じわじわ嫌になってきたわけです。

 悩み事を文章にして送ってこれる人はいいわね。理由がはっきりしてるということだから。なんとなく日々じわじわ「嫌いです」言うても、受け付けてもらわれへんよね。でもそれが一番多いと思う。箸の上げ下ろしや食べ方、うがいの音、ドア閉める音まで嫌。車を汚すのも嫌ね。息子がいいこと言ってましたけど「おかん知ってる? 車大事にせえへん人、女の人大事にせえへん」って。ほんまやわ、これ当たってますよ。

2025.06.22(日)
文=西澤千央
写真=文藝春秋

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