ハリウッドの人気俳優として45年の経歴をもつデミ・ムーア。62歳になった彼女の俳優人生に刻印されるだろう衝撃作が『サブスタンス』だ。共演はヨルゴス・ランティモスなどの名監督たちから評価され注目されているマーガレット・クアリー。そして自らの体験をもとに脚本執筆をし、独創的で大胆な展開に仕上げたのがフランスの新鋭監督コラリー・ファルジャだ。昨年のカンヌ映画祭では脚本賞を受賞する。三人にこの話題作への思いを聞いた。
ムーアが演じるのは元人気女優で、いまはテレビのエアロビックス番組を受け持つエリザベス・スパークル。しかし年齢のせいで降板を強いられてしまう。それを挽回するために求めたのが、ブラック・マーケットで入手した謎めいた薬物「サブスタンス」だ。それを摂取すると、彼女の中からより若くより魅力的な新しい肉体が登場する……。


エリザベス役を望んだ理由
ムーアはこの役を望んだ理由を打ち明けてくれた。
「最初に脚本を読んだ時に、なんて面白く独創的な内容で、素晴らしいと感じました。この作品に出演する機会を絶対に逃してはいけないと思わせる、重要な何かがあったのです。エリザベスという人物は、これまで多くの役で積み重ねたものからは完全に外れていました。それがかえってやってみたいという思いが強くなり、とても興奮しました。エリザベスの中にある欲望やもろさは、自分で理解できた部分もあるし、理解できなかった部分もあります。でもそれが私にとって新たな挑戦でもあったのです」
長年ファンだったデミとの共演
エリザベスが若さと美貌を取り戻しスーとなり、彼女を演じるのがマーガレット・クアリーだ。脚本を読んだ瞬間から本作に惹かれた気持ちをこう明かす。

「何よりもデミとの共演に惹かれました。長年彼女のファンだったのでいつか共演できればと思っていたからです。
脚本は突拍子もない発想でクレイジーなおとぎ話のようで、とてつもなく面白く思いました。同時に子供の頃から親しんできた娯楽映画の影響もどこかに感じられて、とても好きになりました。初めて読んだ瞬間から、この作品に加わりたいと強く願ったのです。
デミがエリザベスという役を演じれば、とんでもない演技を披露してくれるだろうなとも想像しました。そこに私も参加できるんだと考えて、撮影前からわくわくしていました」
2025.05.23(金)
文=高野裕子