総本山の和食料理店で、茅乃舎の真髄を体感

 最後に訪れたのは、福岡市から車で30分から40分ほどの距離にある福岡県糟屋郡久山町。久原本家の本拠地であるこの場所には、「茅乃舎」ブランド誕生のきっかけとなった料理店「御料理 茅乃舎」があります。

日本の伝統文化を感じる店構え

 建物は茅葺屋根が特徴です。20年に一度葺き替え作業を行うなど維持や管理が大変にもかかわらず、食文化同様に、茅葺という日本の伝統文化を間近に見て感じてもらいたいとの思いから、この建物を「御料理 茅乃舎」として建てました。昨年末から今年のはじめにかけて半年間は、ちょうど葺き替え作業の時期にあたり、葺き替え終了後の6月19日(木)には、装い新たに「御料理 茅乃舎」がグランドオープン。ちなみに「茅乃舎」という店名やブランド名はこちらの茅葺からきています。

久原本家グループ社主、河邉哲司の思い

 「近年、日本の多様な食文化を支える産業に携わる人たちが、後継者の不在や儲からないことを理由に次々と廃業されています。そんな状況を変えるべく、我々久原本家グループではそういった方々をいかに守っていくかを次のステップとして考え、取り組んでいるところでございます」そう話すのは久原本家グループ社主の河邉哲司さんです。

和モダンな内装はずっと居たくなる雰囲気

 「例えば、島原のそうめん作り。生産者の方々には、我々のほうからコストがかかってもいいからもっと良いもの、おいしいものを作ってほしいと伝えています。その結果、生産が追いつかないほど、島原の手延べそうめんがたくさん売れました。売れることで後継ぎもできると思うので、結果、産業や産地を守っていくことにつながっていきます。生産者がいなくなってしまったら、我々も商売ができなくなってしまいますから、危機感を抱きながら、こうした活動を行っているところでございます」と河邉さん。

2025.06.19(木)
文・写真=石川博也