長野おばあちゃんが営む農産物加工場を訪問

 次に尋ねたのは、福岡市から車で50分弱の距離にある福岡県飯塚市。この場所には久原本家の人たちから“長野おばあちゃん”と呼ばれ、愛されている長野路代さんが営む農産物加工場があります。

 長野さんは60歳で起業し、農産物加工品を製造、販売する「野々実会」を設立。日本の伝統食や地域の食材を活かした加工品づくりに長年取り組んでいるスローフードの実践者です。

長野おばあちゃんが久原本家のお手本

 「茅乃舎」ブランドとしての取り組みと長野さんの活動内容が一致していたことから関係性を深め、今では久原本家が運営する料理店「御料理 茅乃舎」に、長野さんが毎月料理を提案しています。

 久原本家にとって、食の師匠のような存在が長野さんなのです。

長野おばあちゃんの手作り弁当を味わう

 「野々実会」のある飯塚市は、江戸時代に整備された長崎街道の中で、筑前六宿と呼ばれる六つの宿場町のひとつ。当日はお弁当形式で食事が提供されました。

 参勤交代の時代に難所と呼ばれた冷水峠の茶屋で提供されていたものを参考にして作られた、餅米のごはんの上に鶏肉がのったお弁当です。鶏肉は香りのある牛蒡や椎茸と一緒に炊き込まれているそう。

 お弁当に添えられた小鉢に入っていたのは、大根、鯖、人参で作ったぬくめなますと呼ばれる伝統食です。さらには茅乃舎だしで作った、長野さんが漬けた梅干しのお吸い物も。

 長野おばあちゃんのような先人の食に関する知恵を後世に残すことも「茅乃舎」の活動のひとつになります。

2025.06.19(木)
文・写真=石川博也