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“15秒”でつかみ、「ちなみに」で印象を残す

――PRの現場で大切にしていることは何ですか?

黒田 「最初の15秒」が勝負だと思ってます。書店員さんやテレビ関係者をはじめとしたメディアの方って、毎日膨大な情報にさらされているから、最初の一言で心をつかまないと埋もれてしまうんですよ。

――確かに、最初で惹かれなければ、心は離れてしまいますよね。

黒田 そうなんです。たとえば、「○○というお店のシェフが書いた料理の本なんですけれど……」と話したあとに「実はブルーノ・マーズが日本で最初に訪れたらしいですよ」と付け加えるよりも、最初から「ブルーノ・マーズが日本で最初に訪れたレストランのシェフが書いた本です!」という伝え方ができると、興味を持ってもらえる確率は一気に上がる。情報の切り取り方と順番って、実はものすごく大事なんです。

――なるほど……! 本には、小さい頃から夕食のテーブルで家族にその日の出来事を面白おかしく話していたというエピソードがありましたが、話術が鍛えられていたんですね。

黒田 そしてもう1つ大切なのが「ちなみに」のひと言です。「ちなみに、この著者は毎回靴下がかわいいんですよ」とか、「毎朝5時に畑に行ってから原稿を書いているらしいです」とか、本題とは関係ない話のほうが記憶に残るんですよね。情報より“人”の気配がある方が心に残るというか。

――その人らしさが垣間見える情報って、誰かに話したくなります。

黒田 そうでしょう(笑)? 僕はそれを「デザートの一言」って呼んでます。メインはちゃんと伝えるけど、最後に小さな喜びを残すと、ぐっと印象が深まるんですよ。

2025.05.05(月)
文=船橋麻貴
写真=橋本 篤