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 昨年11月に初のエッセイ集『地球と書いて〈ほし〉って読むな』(以下『ちきゅほし』)を刊行した歌人・エッセイストの上坂あゆ美さんと、同じく昨年刊行の『令和元年の人生ゲーム』が直木賞候補となった作家の麻布競馬場さんには実は意外な接点が。令和のカルチャーシーンで注目を集めるお二人が、創作について、人間について、たっぷりと語り合った初対談です。(全2回の1回目。後篇を読む


「ホスト歌会」では先生と生徒です

――上坂あゆ美さんと麻布競馬場さん、なんだか不思議な組み合わせです。お二人が知り合ったきっかけは?

麻布競馬場(以下アザケイ) 何人か共通の友達もいましたけど、きっかけとしては「ホスト歌会(実業家の手塚マキ氏が主宰するホストたちによる歌会)」でしたね。ずっとZoomで画面越しに拝見していましたが、リアルにお会いするのは今回が初めてです。

上坂あゆ美(以下上坂) 私、アザケイさんがなんで急にホスト歌会にいらしたのか、あんまりわかってないです。

アザケイ いや、本当にそうっすよね。俺もよくわかんないんですけど。ある日の夜、六本木での手塚マキさんとの出会いを経て、気づいたら短歌を作ることになっていたんです。最初は「授業参観させてください」って観覧するだけの予定だったはずが、いつの間にかホストでもないのになぜか歌会にいるという状況が始まりました。

上坂 もともとはマキさんが自分の店のホストたちに短歌をやらせるための会だったけど、ホスト以外でもマキさんが見込んだ人が呼ばれることがあって。私も選者(短歌の選評をする人)をやらせてもらうようになったのは2024年からなので、かなり最近です。

アザケイ そうだったんだ! 大重鎮なのかと思ってた。

――ホスト歌会においては上坂さんが先生、アザケイさんは生徒、ということですか?

アザケイ 大先生ですよ。みんなが作った短歌に票をつける権利を持っていますから。僕はホストたちの横で短歌を詠む係をやっています。

上坂 いやいや、やめてください。ところで、アザケイさんってホスト歌会で初めて短歌作りました?

アザケイ そうなんですよ。それまでやったことなくて。

上坂 めっちゃ巧いですよね。

アザケイ でも、当たり前かもしれないけど、文芸と短歌は近い気はします。まず“原液”を作って、それをどういう形でアウトプットするかという話だと思うから。

2025.03.28(金)
文=ライフスタイル出版部
撮影=佐藤 亘