この記事の連載
上坂あゆ美×麻布競馬場 対談【前篇】
上坂あゆ美×麻布競馬場 対談【後篇】
ChatGPTみたいにPDCAの回転が速すぎる

上坂 それで言うと、アザケイさんはもっと自分のための短歌作った方がいいっすよ。
アザケイ いや、そうなんですよね。最近自分でも思います。
上坂 ホスト歌会で「これ、上坂さんに選んでもらおうと思って作りました」みたいな歌を作ってくるから。それこそChatGPTみたいに、PDCAの回転が速すぎるんですよ。
アザケイ やっぱ基本が“ハック”の人間なんです。
上坂 アザケイさんの短歌はバリ巧いんですけど、こっちが「ハックされてる」って感じる瞬間がすごくあって、そこだけが嫌なんです。私はハックしてないアザケイさんの短歌を読んでみたい。

――そういえば、お二人の共通点について考えていた時に、最近上坂さんが提唱している「令和ロマン筋(あらゆる事象を高速で分析、言語化し、戦略的に作品および自己をプロデュースする、非常に器用な能力の意。お笑いコンビの令和ロマン(特に高比良くるま氏)に由来)」を思い出しました。
上坂 私だけが言ってる説ですけどね(笑)。「令和ロマン筋」っていうのは、要は「ハックする能力」って意味です。
――この筋肉が発達しているという点では共通していても、上坂さんは「本当になりたい自分はこうじゃない」という複雑な思いがあるのに対し、アザケイさんは特に葛藤はないのかなと。
アザケイ 全然ないっすね、俺。むしろ令和ロマンになりたい。
上坂 私はトム・ブラウンになりたいです。
アザケイ 明確なスタンスの違いがありますね(笑)
上坂あゆ美(うえさか・あゆみ)
1991年、静岡県生まれ。2022年に第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』(書肆侃侃房)でデビュー。Podcast番組『私より先に丁寧に暮らすな』パーソナリティ。短歌のみならずエッセイ、ラジオ、演劇など幅広く活動。
麻布競馬場(あざぶけいばじょう)
1991年生まれ。慶應義塾大学卒。2021年からTwitterに投稿していた小説が「タワマン文学」として話題になる。2022年、ショートストーリー集『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』でデビュー。『令和元年の人生ゲーム』が第171回直木賞候補作に。

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2025.03.28(金)
文=ライフスタイル出版部
撮影=佐藤 亘