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上坂あゆ美×麻布競馬場 対談【前篇】
上坂あゆ美×麻布競馬場 対談【後篇】
人間はこれから何を考えればいいんだろう

上坂 (ケータリングとして置いてあった数種類のお団子を見て)お団子食べてもいいですか?
アザケイ 先行どうぞ。俺、ゆとり教育受けてるから、選択肢があると決められないんですよ。
上坂 え、でも多分同い年(1991年生まれ)ですよね。社会に出たタイミングも同じかも。
アザケイ マジっすか? ガチ同期じゃないですか。

上坂 そういえば、以前外資の広告代理店に勤めていた時に、「Z世代分析」みたいなダルい仕事をやらされたことがあったんですよ。そこで私がデータをもとに唱えていたことと、『令和元年の人生ゲーム』に書かれていたことがかなり近かったんです。
「Z世代が好きなのは『リバイバル』だとよく言われるけれど、その理由は過去に正しいとされたものに普遍的な価値があると信じているから。あるいはこれだけ不安定な世の中において流行るかどうかわからないものよりも、過去に正しいとされたものを信仰する方が楽なのではないか」みたいなことをレポートに書きました。そうしたら、近いことがこの本の中にも書いてあった。「Z世代の見方が自分と近いな」って思ってプロフィールを見たら、同い年でした。

アザケイ そうだったんだ。でも、こういう性質って実はZ世代だけに特有のものではないですよね。「人生における情報量を減らしたい」という欲望を、人間はずっと持っていると思うんです。もっと意地悪な言い方をすると、最近Xにいる人たちが短歌を詠んでるのもその影響があるんじゃないかと。少ない文字数で自己表現をするという、人生の省エネ運転化。新しいトレンドを作るよりも、昔あったものをディグってくる方が楽だし、安心感もある。
最近、初めてChatGPTを使って短歌を作ったんですけど、マジで楽なんですよね。まだゼロから短歌を作れるわけじゃないけど、自分が言いたいことが予め決まっていれば、それを57577の形に表現したパターン出しは100でも200でもやってくれるから、そこから上手い表現をピックアップして繋げていけば、それなりのレベルのものができる。それがいいか、それが楽しいかはさておき、どんどん文芸もサボれるようになってきたんだと思いました。このリバイバルブームの末にあるのは、もう人間は小説も書かないし、短歌も詠まない世界。これから何を考えればいいんだろうって、結構真剣に考えます。
2025.03.28(金)
文=ライフスタイル出版部
撮影=佐藤 亘