
ライブ配信サービス「TwitCasting」で2016年から放送されている怪談チャンネル「禍話(まがばなし)」。語り手のかぁなっきさんと映画ライターでもある聞き手・加藤よしきさんの名コンビは、背筋の凍るような不可解で恐ろしい話はもちろんのこと、その合間に挟まれる軽妙なトークの魅力もあって、女性・男性問わない人気を獲得しています。
今回はそんな「禍話」から奇妙な行方不明者、そして“赤いリボン”に関わる不可思議なストーリーをご紹介――。
山奥のコンビニで見つけたものは……

車のドアをバタンと閉めて外に出ると、夜の山の澄んだ空気がスーッと鼻を抜け、ようやく息抜きできる土地に来た、という思いがしたそうです。
しかし、そんな爽快感のすぐ後にやって来たのは山奥の静けさ。
都心部からここまで延々と聞き続けていたエンジン音が途切れたのもあって、辺りは息苦しいほどに静まり返っており、駐車場には彼女たち以外に車は停まっていませんでした。
「こんなところにコンビニなんか作っても誰も来ないだろうなぁ」
扉を押し開けて入った店内は、古めかしくて印象的な外観と違って別段変わったところはなく、品揃えも悪くないごく一般的なコンビニという風合いでした。
なんで外観だけ昔のままなのだろう——そう思ったFさんでしたが、店員さんにその理由を聞くのもなんだか失礼かなと、入ってすぐ横の雑誌コーナーで時間を潰そうとしました。雑誌コーナーの週刊誌や女性誌はきっちりとビニールで包装がされており、立ち読みすることができない状態だったそうです。
さて、どうやって時間を潰そう。むしろ、車に残ってスマホでもいじっていた方がよかったかな……そのチラシが目に入ったのはそんな風に周囲を見渡したときでした。
チラシというよりも貼り紙のようなそれは、乱雑な手書きをコピーしたような作りで、街中の掲示板とかに貼られているならまだしも、コンビニの店内にデカデカと何枚も貼るようなものではない印象だったそうです。
2025.05.03(土)
文=むくろ幽介