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マニアックなワインを見事に合わせてくれる

 こちらでいただくお酒はワイン。いわゆる自然派と呼ばれているものがほとんどで、フランス、イタリアのものを中心に揃えているお店が多いなか、こちらはイタリアと中欧のものが中心。祐太さんならではのセレクトは、今まで飲んできたフランス、イタリアのものとはひと味もふた味も違った、いい意味でひと癖もふた癖もあるものが味わえます。

 その楽しみにハマってしまってから、どこへ行ってもボトルで注文してガブガブ飲んでいた私ですが、ここでは何もかもお任せで、グラスでそれぞれの料理と合わせて双方を味わいながら楽しむようになりました。

 本日の料理が記された黒板には、ウツボやアンコウといった素材を使ったメニューも。「ウツボ!?」と慄く私に、祐太さんは「ウツボは古代ローマでは、すでに養殖されていた食材なんですよ」とサラッと返答。また、普段は鍋くらいでしか食さないアンコウも、絵梨さんの手にかかると、こうなるのかというお料理になって出てまいりました。

 そしてやっぱりこのお店にもカウンターあり。しかもよく使われているカウンターで、祐太さんと話がしたい人は大抵この席を陣取っているような……。ひとりで来ている方も多く、男性女性問わず、おひとり様同士隣り合わせてはぽつりぽつりと話している姿も見かけます。それこそ地元の方も多いですが、このお店の個性あふれる味わいとワインのセレクトを聞きつけてやって来ている方も多いように見受けます。

 そんな魅惑のワインと料理の組み合わせ、やろうと思ってもなかなかできない、遭遇しない組み合わせに今夜も舌鼓。たまには、誰かと一緒もいいけれど、でも、やっぱりカウンターで、ひとりでじっくりこの感じを味わいたくなってしまうんだよなぁ。

piu forte(ピユ フォルテ)

所在地 神奈川県鎌倉市雪ノ下3-3-26
電話番号 0467-67-1735
営業時間 18:00~22:00、土・日曜はランチ営業12:00~13:30L.O.もあり
定休日 月曜、祝日、不定
Instagram @piuforte_2016

赤澤かおり(あかざわ・かおり)

料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)、編著に「いざ、豊島屋」(KADOKAWA刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny

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Column

赤澤かおりの鎌倉ひとり飲み

鎌倉で暮らしながら、料理編集者として飛び回る毎日を送る、赤澤かおりさん。どんなに忙しくても赤澤さんが元気いっぱいなのは、地元・鎌倉でお酒を飲む時間。このシリーズでは女性のひとり旅も多い鎌倉で、「ひとり飲み」に優しいお店をご紹介します!

2025.04.12(土)
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美