想像を絶する漁獲高…!

 千代川でのカニカゴ漁最終日。これまでのパターンから、モクズガニの捕食が盛んに行われるのは夜間。このタイミングで捕獲できなければあとはないだろう。

 はじめに小サイズのカゴを上げてみると…。

 モクズガニを2匹捕獲。狙い通りこれまで仕掛けたエリアの中では、モクズガニの生息数が一番多そうだ。それでは大サイズのカゴはどうだろうか。消波ブロックの隙間に忍ばせたカゴを慎重に引き上げると、どうもカゴの様子がおかしい……。

 ひとカゴでなんと15匹ものモクズガニを捕獲できた。誰がこの結果を予想できただろうか! やはり人工物の陰に隠れた個体が多かったのだろう。カゴに入りきらなくて諦めたカニもいたのではないかと思えるほど、カニカゴが飽和状態だ。

 遊漁規則で採取の制限はないが、漁獲圧を考慮して小さな個体はリリースした。また来年も楽しませてもらおう。

鳥取県の郷土料理「がんちゃ汁」を堪能

 採ったモクズガニは泥抜きも兼ねて、クーラーボックスに薄く水を張り、生きたまま持ち帰った。帰宅するまでの半日でさえ水が濁り、泥を吐き出したのがわかる。

 なお、泥抜きによる味の違いは個人の味覚次第だそうで、恐らく私はわからない派である。

 調理法は最もポピュラーな蒸しガニとカニ飯のほか、鳥取県の郷土料理「がんちゃ汁」にも挑戦した。名前からでは食材すら想像できないがんちゃ汁だが、調べてみると、まずは鮮度のいいモクズガニを水と一緒にミキサーにかけ粉砕し、目の細かいザルで液体を濾すらしい。

 カニのタンパク源が抽出された液体を味噌汁に入れ加熱すると、まるで溶き卵のようなふわふわな食感に仕上がる。

 千代川の恵みをいただきます。

 蒸しガニの甲羅いっぱいに詰まったミソは濃厚で確かな甘みがある。海のカニと少し違うクリーミーな舌触りもなかなかだ。脚は細身なものの丁寧に取り出しまとめて食べると、口内が贅沢なカニの香りであふれる。

 がんちゃ汁は一見卵のようなふわふわな塊だが口に入れた途端、凝縮したカニの香りに驚かされる。モクズガニを出汁だけで終わらせず、かき出しずらい身も余すことなく味わえる先人の知恵が詰まった料理だと実感した。

 注意すべき点は寄生虫。淡水に生息するカニは、肺吸虫の中間宿主であるため、加熱調理が必須となる。さらにミキサーで粉砕する際は、液体が付着した食器、タオルなどは必ず熱湯消毒を行う。衛生管理に慎重さが伴うが、この芳醇なカニの旨味はがんちゃ汁でしか味わえない。ぜひご賞味あれ。

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2025.04.07(月)
文=ぬこまた釣査団(大西)