横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」
![左:《人面付土器》(鶴見区上台遺跡)[部分] 弥生時代後期 H32cm 横浜市歴史博物館蔵(神奈川県指定重要文化財)右:ルネ・マグリット 《王様の美術館》[部分]1966年 油彩、カンヴァス 130.0 x 89.0cm 横浜美術館蔵](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/c/8/1280wm/img_c8505bcfae81e44f8354d75e9eadc97a715960.jpg)
リニューアルを記念して開催される「おかえり、ヨコハマ」展では、横浜美術館が所蔵する1万点以上のコレクションの名作の数々を新たな視点で読み解き、縄文時代から現代の8つの章に分けて紹介しています。
アートを通して見えてくるのは、新しい横浜の姿。
多様性をテーマに、これまで横浜を語る上で、あまり注目されてこなかった存在―開港以前の横浜に暮らした人々、そして、女性や子どもたちなど―にスポットをあてることで、新たな横浜が浮かび上がります。
横浜で発掘された土器や、本展のために新たに制作された作品とともに、セザンヌ、ピカソ、マグリット、奈良美智など横浜美術館でおなじみの人気コレクションも勢ぞろい。
どんな風に鑑賞したらいいか悩んだら「コラム」と書かれた展示パネルを読むのがおすすめ。コラムは、章ごとに分かれて解説されているので、作品を読み解くヒントになります。
ここでは、展示されている主な作品と合わせて、新たな視点で描かれた“横浜”を紐解いていきましょう。
「横浜」の歴史を再解釈。新たな発見を美術館で


それぞれの章は横浜の歴史を追体験するように構成されています。第1章「みなとが、ひらく前」は、1859年の開港以前の横浜を感じられる作品等が展示され、第2章の開港直後の横浜の様子がわかる作品へと続いていきます。開港された3港のひとつである横浜港。多くの外国人が横浜を訪れることで生まれた西洋風の街並みや文化は「ハイカラなもの」として今の横浜にも根付いています。


外国人向けの土産や輸出品として、多くの絵画や工芸品が横浜で作られたのもこの時代の特徴。無地の陶器を瀬戸などの産地から取り寄せ、海外向けに絵付けをしてから港へ送り出す「横浜絵付」もそのひとつです。
横浜独自の西洋文化が脚光を浴びる一方、生麦事件をはじめとする外国人襲撃事件が起こったことも忘れてはなりません。横浜は時に豊かな実りを、時に激しい衝突を生む「コンタクト・ゾーン(接触領域)」として著しい発展を遂げました。


1889年に市制が施行され、横浜の人口は11万人に膨れ上がりました。日本屈指の貿易港として発展してきた矢先、1923年関東大震災が横浜を襲います。震災前に描かれた横浜の作品、生々しい被害の様子を描いた作品は当時の横浜を知る上で大変貴重な記録になっています。
その後少しずつ復興を果たした横浜。1930年には山下公園が完成します。しかし今度は1945年の大空襲が襲います。洋画家、松本竣介による《Y市の橋》は、横浜駅の月見橋を書いたシリーズで横浜市の展示でも初となる連作での紹介。年代順に並べられた橋の絵をじっくり見比べていくことで、戦争によって変化していく横浜がありありと見えてきます。災害や戦争の無常と、そこから立ち直っていく横浜のたくましさを感じます。
2025.03.14(金)
文=桐生奈奈子