丹下健三の構想を継承。より「目に見える」形に

「横浜美術館は、みなとみらい21地区につくられた最初の施設のひとつ。設計は丹下健三です。彼は、都市の中にどのように建築があるべきかという視点で構想し、建物の内外に広場をつくる代表作が多い建築家として知られています。
この横浜美術館も、中の大きなフリースペースを広場としてとらえ、外に広がる広場とのつながりを持たせているように設計されているんですね。開館当初は迫力のあるシンメトリーな外観がポストモダンを象徴すると称えられていましたが、自由に開かれた広場を美術館内に作ったこともこの建築の魅力だと気付いたんです。
金沢21世紀美術館も多くの人が気軽に訪れることのできるフォトジェニックなフリースペースが数多くありますが、横浜美術館でも、広場をもっと開放的に、多くの人にひらいた形にしたいと考えました」(蔵屋さん)


じゆうエリアはピンクを基調に空間設計がされています。元々使用されていた御影石がピンクやベージュといった色合いのものだったことから、空間に馴染むようにピンクをキーカラーにしたのだそう。天窓から自然光が射しこむとやわらかな印象に。
港のようにあらゆる人を受け入れ、開かれた場になるという思いが込められた横浜美術館は、まさに多くの人が自由に訪れるのにふさわしい空間になっています。
2025.03.14(金)
文=桐生奈奈子