激動の時代を生き抜く女性たち。遊郭・赤線地帯へ踏み込む作品も

動乱の時代の作品の中で注目したいのが女性のアーティストによる作品です。
《緑蔭》は横浜市の小学校教員だった片岡球子が教え子を描いた作品。時は、日中戦争の最中。韓服をまとった教え子の姿が描かれていることから、多くの朝鮮人が横浜で生活をしていたことがわかります。

横浜の遊郭や赤線を赤裸々に写した横浜出身の写真家・常盤とよ子の作品も往時の横浜を鮮明に記録しています。横浜は港崎遊郭が1859年に開業され、戦後に米軍兵のための慰安施設が準備された歴史があります。その後も横浜には赤線地帯が存在し続けました。
女性の職業に焦点を当てた常盤は、そこで働く遊女たちの作品も数多く残しています。社会が覆い隠そうとするダークな部分の中でも、そこに生きる一人一人は賢明に生きている。決してポジティブな言葉だけでは語り尽くせない横浜を克明に映し出します。
2025.03.14(金)
文=桐生奈奈子