この記事の連載
# 麹文化研究家なかじさんインタビュー前篇
# なかじさんが薦める麹づくり 実践篇
麹は消化を助けてくれる。調子の悪い時には「味噌湯」がおすすめです

―― いざ、マイポケット麹を使って作るものとして、入門編としてふさわしいのはどんなものでしょう。
「甘酒や味噌がおすすめです。手軽にできますし、甘酒は酵素の宝庫といわれていて、人間に必要な酵素がすべて含まれているといわれているんですよ」
―― 酵素をとることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
「人間って、ごはん食べたときに自分の胃液で消化してから、腸で吸収しますよね。実はこの作業にはとてもエネルギーを使うんですが、その手助けを酵素がしてくれます。
たとえば麹に肉を漬けてやわらかくしてから食べると、肉に酵素が作用して、たんぱく質を分解し、消化しやすいアミノ酸にしてくれる。つまり、半分消化してくれているのと同じような状態で食べることができるんです。中高年になると、胃腸の力がだんだんと落ちてくるので、甘酒を食前や食後に飲んだり、麹で調理したものを食べたりすることで、体への負担が軽減されるということが期待できます」
―― 胃腸の弱い方にもよいというわけですね。
「麹を食べると、菌自体は胃酸でほとんど死滅するんですが、残った菌糸が栄養素となり、常在菌が増えていくんですね。そうなることで、腸内の状態がよくなります。便秘症の方でも便が出やすくなったり、老廃物がなくなって消化吸収効率が回復していきます」
―― お味噌も同じように消化を助けてくれますか?
「味噌ももちろんいいですよ。僕がよくやるのは、朝や、仕事の合間などに、コーヒー代わりに味噌湯を飲むんです。味噌をお湯で溶いただけなんですが、大豆の食物繊維や、麹の酵素、ビタミンなども取れます。食べすぎたなというときとかお腹の調子が悪いときにもおすすめ。高温だと酵素がダメになってしまうので、お湯は70度くらいにするのがポイントです」
後篇は実践編。ポケットで温めて作るポケット麹とその麹を活用した甘酒のつくり方を教えていただきます。
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麹づくりと発酵しごと: 麹、味噌、醤油、甘酒、酒種パン、発酵調味料のレシピ
著・なかじ
定価 2,200円
農山漁村文化協会
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なかじ
麹文化研究者家。千葉県の造り酒屋「寺田本家」で、8年間に渡り蔵人頭として酒造りに関わり、伝統的醸造技術・麹技術を修得。その後独立、「麹の学校」開始。2020年に麹作り本『麹本〜koji for life~』を発表、『玄米ごはんと野菜のおかず』(パルコ出版)、『酒粕のおいしいレシピ』(農文協)などを出版し、新刊は『麹づくりと発酵しごと』(農文協)。
https://www.nakaji-minami.com/
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2025.02.19(水)
文=吉川愛歩
写真=末永裕樹(インタビュー)、寺澤太郎