なごみの灯り

ゲストルームには、ベッドにもなる無印良品のソファに、アーネ・ヤコブセンのスタンドライトを組み合わせて。コンパクトなので模様がえがしやすくって、年々こういう軽やかな家具に惹かれる。

 灯りについて。部屋をすみずみまで照らす太陽のような照明が苦手です。疲れて帰ってきて家の中が昼間のように明るいと、なんとなく休まらない気がします。

 ヨーロッパの家庭のように、部屋や用途に合わせたライティングにしようと試み中で、リビングに吊っていた大きなイサムノグチの和紙の照明も、つい最近取り外しました。天井のスポット照明に、食卓はテーブルライトを使い、あとは椅子のコーナーにスタンドライトを組み合わせて、用途に応じて灯りをつけています。最初は薄暗過ぎる? と思ったけれどすぐに目が慣れて、なんだか落ち着くものです。

キャンドルは、お盆や大きな皿に長いもの短いものを何個か、寄せ植えのように置いて。灯りをつけると高低が出て、なんともいい雰囲気になる。

 また、ゆったりできる夜にはキャンドルを灯したりもします。ロマンチックだし電気節約にもなるし、3.11以降、原子力のことやエネルギーのことやらを考えると、たとえば毎週金曜日の夜は「キャンドル・デー」を全国でやったらどうかしら? なんて思ったりするのです。

 いずれにしても、食事後、コーヒーテーブルにキャンドルを灯し、「ちょっといいワイン開けようか」なんて夫に声をかけて、くつろぐ時間は小さな贅沢。青白く、あたたかい炎を眺めていると気持ちがやわらいで、普段にないふたりだけの話ができます。そういえば、キャンドルの灯りの前ではケンカしたことないなあ(笑)。

石村由起子 (いしむら ゆきこ)
奈良在住。全国からファンが訪れるカフェギャラリー『くるみの木』と、ミシュラン一つ星のホテルレストラン『秋篠の森 「なず菜」』のオーナー。
暮らしを楽しむ祖母の知恵にくるまれて育ち、学生時代には染織を学び、民藝を入口に手仕事に精通。自らのショップで展開する、暮らしの道具のセレクト眼にもファンが多い。さらに近年は、生活プロデュースの視点での商品開発、街おこしプロジェクトなど幅広い分野からオファーが引きもきらない。著書に『私は夢中で夢をみた』(文藝春秋)、『奈良・秋篠の森「なず菜」のおいしい暮らしとレシピ』(集英社)など多数。HP 「くるみの木」 http://www.kuruminoki.co.jp

Column

石村由起子の暮らしの“ツカミドコロ”

石村由起子さんといえば、人気のクラフト作家や料理家、エッセイストなど生活美学のある人たちが一目おく、暮らし上手です。
祖母から受け継いだ知恵と礼節、愛するモノを捨てずに活かすワザ、「これだけは」と手をかけてきた習慣など、多忙な日々のなかでも心豊かに暮らすために石村さんが「大切にしてきた」視点とアイディアを、CREA WEB読者に指南。年齢をこえて共感できるチャーミングな暮らし術を、プライベートフォトを添えて綴ります。

2014.05.12(月)
文・構成=おおいしれいこ
撮影=石村由起子